法のくすり箱


Q、家が地震後の火災で全焼してしまいました。火災保険には入っていましたが、地震保険まではつけていません。これから先ローンを支払い続けなければならないのに、何とかならないものでしょうか?

A、借金と建物のあるなしは別問題ですから、建物は滅失しても借金だけは残り、ローン支払い義務はなくなりません。おまけにこれから新居を取得するためにはまた借金を必要とするところです。被災者は残った支払い義務とあわせ二重のローンに対処しなければなりません。
 こうした場合、単なる火災なら保険でローンを返せるケースが多いのですが、地震に起因する火災に対して火災保険は契約金額の5%を限度に最高額300万円を支払ってくれるにすぎません。しかも建物が半焼以上の被害を被った場合にかぎり、地震火災費用保険金という名目で前述のように300万円までの見舞金程度しか保険がおりないのが現状です(ただ、今震災では地震から何十時間もたってからの火災により焼失した例も多く、こうした事例に火災保険の支払いがなされないのは問題があるとの見解もあります)。
 ちなみに、地震保険に入っておけばよかったかという点ですが、現在の制度は火災保険とセットで入ることになっており、支払限度額は火災保険金の30〜50%の範囲内で最高1000万円にすぎなく、保険料は近畿地方で木造モルタル建物の場合1000万円の保険に対し年額3万1000円とかなり高額です。このため全国の世帯加入率は7.2%と低く、保険料が高いから加入しないのか、加入しないから保険料が高いのか、ともかく、将来の大きな改善課題です。
 さて、火災保険によるローンの返済は期待できないとしても、これだけの多くの被害が出ると、この部分に関する大震災に基づく特別措置が行われる可能性があります。社会的な救済策の最新情報への注意を怠らず、自らも負担軽減への努力を心がけて下さい。
 目下報道されるところによれば、各借入金融機関は支払の一時猶予・分割弁済金の減額など個別に弾力的取扱いの相談に応じています(たとえば第一勧銀・三和・さくらなど一部の金融機関では元利金の返済猶予や金利の減免相談、住宅金融公庫は被害に応じて3年の金利の減免など)。また地元自治体から国への要望事項として、残ったローンの融資残高の元金の据置期間と償還期間の延長、それに伴って上乗せとなる利子の免除のほか、利率の0.5%軽減を訴えている(H8.2.21報道
)とのことです。いずれ、新規の住宅取得に係る低利の特別融資と合わせた被災者に対する特別な立法措置を期待できるかもしれず、どうか当面気持ちをはげまして再興への意思を持続して下さい。
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 その後、地震保険は改正され、融資制度も整備されてきました。
 概要は以下のとおりです。

地震保険>平成8年1月1日契約分より実施
○支払限度額は、建物については1000万円から5000万円に引上げ
家財については500万円から1000万円に引上げ
(但し、従来どおり、火災保険の契約金の30〜50%の範囲内で契約する方式がとられる)

○家財の損害・保険金算定方式の改正
従来は、家財は全損にならなければ契約金額の10%(但し、建物の被害が一部損壊の場合は5%)
これが、家財の損害に応じて下記の3段階となった。
損害の程度支払われる保険金
全損(損害割合が時価の80%以上)契約金全額
半損(損害割合が時価の30%〜80%)契約金の50%
一部損(損害割合が時価の10%〜30%)契約金の5%

住宅融資制度と利子補給制度
○公的機関による長期・低利の融資制度
・住宅金融公庫の災害復興住宅資金融資
・ひょうご県民住宅復興ローン
・神戸市災害復興住宅特別融資など
(いずれも利率は3.15%〜3.5%[変動あり]で、元金据置期間が新築・購入なら3〜5年ある。融資限度額その他詳細は金融機関などで問合せを)

○復興基金による利子補給制度
上記の低利融資に加え、さらに利子補給が行われる。 原則5年、最長10年にわたり、0.50%〜3%の利子補給がある。 (各金融機関で申請手続ができる)

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