法のくすり箱


Q、分譲マンションですが、地震によってひどい損傷を受けました。修理や建替えをする場合の基本的な考え方はどうなっているでしょうか?

A、分譲マンションの法律関係については「建物の区分所有等に関する法律」(区分所有法)によって規制されています。この中で復旧及び建替えについても規定があります(61〜64条)。
 まず、修理についてですが、各個々人の部屋(専有部分)の修理については、区分所有者が各自の個人負担で行わなければなりません(61条1項)。また共有部分(マンション建物の基本的躯体部分)の修繕は、(a)建物の価格の2分の1以下に相当する被害<小規模滅失>なら、とくに規約の中で特別な規定を設けていないかぎり、集会で過半数の賛成による決議で(同3項)、(b)建物価格の2分の1をこえる被害<大規模滅失>なら、集会の4分の3以上の賛成で(同5項)、修理をすることになります。
 (a)<小規模滅失>の場合、修理についての集会決議がなければ、区分所有者各自で復旧しその復旧費用を他の区分所有者に対してその共有部分の持分の割合に応じて分担を求める(償還請求)することもできます(同2項)。また、(b)<大規模滅失>の修理の場合には、修理費用も多額となるため、決議に賛成しなかった区分所有者は賛成した区分所有者に対して建物およびその敷地に関する権利を時価で買取るよう請求する権利が認められます(同7項)。
 次に、大きな被害を受けたため建替えを行う場合の手続きですが、集会において5分の4以上の多数で建替え決議をすることができます(62条1項)。建替え決議の内容は、(1)再建建物の設計概要・(2)費用概算・(3)費用分担・(4)再建建物の区分所有権の帰属について決めなければなりません(同2項)。そして、この決議に賛成しなかった者には建替えに参加するかどうかを2ヶ月以内に回答するよう書面で求め(63条1・2項)、参加しない旨回答した者および無回答の者に対しては、さらに2ヶ月以内に時価で区分所有権および敷地利用権を売渡すよう請求することができます(同4項)。もし建替え決議後2年以内に建替えが実行されないときには、買戻しをすることもできます(同6項)。
 なお、建物が大きな被害を受けた日から6ヶ月以内に(後記特別措置法で1年に延長)復旧や建替えが決議されない場合には、各区分所有者は他の区分所有者に対して自己の権利を売る(時価で買取請求)ことができます(61条8項)。
 ちなみに、文中の多数決は、いずれも共用部分の持分割合により定めた議決権及び区分所有者の数で決議されます。また、買取りや売渡しの時価についての協議がととのわないときには、訴訟により裁判所が決定することになりますし、修理費用や買取代金の支払い及び売渡した後の明渡期間などについても、裁判所で一定の猶予期間をもらうことができます。
 ところで、上記の現行復旧・建替制度は、今回の震災のようなマンション全体の倒壊のケースを予想していないため、マンション全体が崩落あるいは焼失したときには建物は全部滅失となり、もはや区分所有者にはマンションの敷地の共有持分権しかなく、共有地の変更には民法の規定が適用されて、全員の合意が必要と考えられます。現在、そのような場合の再建築にも5分の4の賛成で行えるように法制定(仮称「被災区分所有建物の再建に関する特別措置法」)を急いでいるところです。
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 その後、「被災区分所有建物の再建等に関する特別措置法」が制定され、平成7年3月24日施行されました。これは大規模な火災・震災などの災害によって滅失したマンションの再建を容易にするために作成されたもので、政令で定める災害に適用されます。もちろん、適用第1号となったのが、この阪神・淡路大震災でした(政令81号、平成7年3月24日施行)。
 この新法に基づき、3年以内(平成10年3月23日までの間)に、「敷地」の共有持分の価格の割合による議決権の5分の4以上の多数が得られれば、建物の再建の決議をすることができることとなりました(新法3条)。このとき、再建のための集会を招集するのは、議決権の5分の1以上を有する敷地共有者が招集することとなります(新法2条)。この他、決議内容等は、区分所有法の「建替え」についてと同じ手続になっています。

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