法のくすり箱


Q、隣家の建物・ブロック塀などが私の住居に倒れかかっています。すぐに取り除くように要求しているのですが、なかなかとりかかってくれません。私が勝手に危険な建物を除去したり予防措置をとることは可能でしょうか?

A、隣家があなたの住宅に倒れかかって二次的な災害や損害を及ぼすおそれがあるときには、あなたは隣家に対して予防措置をとるように請求することができます(自分の土地・建物などの所有権や占有権の効果として認められますので、持家に限らずあなたが借家の場合でも請求できます)。
 しかし隣家が応じない場合や、避難していて連絡がとれない場合には、裁判所に上の予防措置をとることを求める仮処分申請という手続を得て、除去や防止措置をとることができます。
 しかし余震のたびに倒壊が進んでいるなど緊急性のある場合、仮処分を得てからでは事実上間に合わないことも多いでしょう。そこで、あなたが自分の利益を守るための実力行使をすることが可能です(緊急避難・正当防衛)。緊急避難は隣家の建物自体が急迫の危険を構成しているとして、自力で隣家の建物を除去することです(民法720条2項)。正当防衛は事態が工作物責任(同717条)を生ずるような緊急の状況(放置するとあなたの家を破壊するは必至)にあるときに許される自力救済です(同720条1項)。ただしいずれも、防衛されるべき法益(あなた側)と侵害される法益(隣家側)とのバランスが問題となります。バランスを失したときには、過剰避難・過剰防衛ということで自力救済といえども完全には違法性が阻却されず、損害賠償の問題を生ずる余地があります。  場合によっては、公的機関に危険な建物等を撤去してもらう方法もあります。市町村長は災害の拡大を防止するために必要な応急措置をとることとされ、その支障となるものの除去その他の措置をとることができると定められています(災害対策基本法62・6条)。よほど危険と考えられる場合には、早急に市に申し出ることも一方法です。
 一般論としては以上のとおりですが、何より隣家を説得し、もしこのままで損害が発生した場合の賠償・責任は隣家にあることをよく話して、取壊しや応急修理・費用負担などについてできるだけ合意をとりつけて対応することを原則として下さい。

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