法のくすり箱


Q、2年間パートに出ていた工場が閉鎖され失業しました。収入もなく義援金ももらえず、貸付を受けても返済の目処もなく困っています。雇用保険未加入でも失業給付が受けられると聞きましたが、ほんとうでしょうか?また私のように収入が少なくてはだめでしょうか?

A、パートタイマーでも「短時間労働被保険者」として雇用保険は適用され失業給付を受けることはできます(雇用保険法6条1号の2、くわしくはそよ風43号〔現在登載検討中〕)。1週間の労働時間が20時間以上及び年収90万円以上という基準がありますが、このたびの地震による離職者に対しては、この90万円の基準がかなり引き下げられています。特別措置なので職業安定所の正式コメントはありませんが、ケースバイケースで、働く時間が週20時間以上であれば、年収の額は問題にせず柔軟に対応されているようです。ですから収入面のご心配は必要ないと思います。
 つぎに、過去2年間の未加入期間をどのような手続きで加入期間へ切り替えるかですが、まず第1に、会社に対して「雇用保険加入の遡及手続き」を開始するように申し出てください。会社側には従業員を使用した以上、雇用保険加入の法的な責任と義務があります。そして保険料は最高過去2年間に遡って払い込むことができるのです。是非、申請手続きの依頼を遠慮なく申し出てください。
 しかしどうしても断られたり、あるいは会社の責任者と連絡がとれないなど事情があるときには、自分で申請手続きをとることができます。これまで払っていなかった労働者負担分の保険料を支払って加入手続きをすればよく、労働者負担分は賃金の1000分の4.0(業種などにより若干異なる)に過ぎませんので、この方法で加入されることです。通常はいろいろと面倒な書類が必要ですが、地震による特別な事情なので書類面では簡略に受け付けてくれるはずです。ただどうしても必要なのが、働いていた期間・その間に受け取っていた賃金額を証明するものです。たとえば、給与明細書・源泉徴収票などがあればそれらを持ってお近くの公共職業安定所に出向いてください。口頭で、過去2年間の遡及加入申請手続き及び今後の失業給付受給手続きができます。証明書類がどうしてもみつからない場合でも、個々に相談にのって、就業期間・賃金を別の方法で証明するものを考えてくれるケースがあります。是非迷うことなく一度足をお運びください。
 なお、短時間労働者の失業手当の給付日数は、加入期間2年で、55歳未満であれば90日、55歳以上65歳未満で180日となっています。さらに今回は地震関係特別措置で60日が加算されますので、合計150日(55歳未満)あるいは240日(55〜65歳)給付を受けることができます。手当金額はそれまでもらっていた賃金の額によりますが(最低失業手当日額2390円〜最高額9040円)、たとえば賃金日額が5000円の場合には失業手当日額は3670円、6000円なら4230円、7000円なら4730円などとなります。
*     *     *

 上の記事は震災直後に書かれたものですが、「雇用保険加入の遡及手続き」は、震災のときだけの特別の措置ではありません。たとえ雇用保険未加入であっても、常時、この手続きさえすれば失業手当が受けられます。
 ちなみに、平成7年4月の雇用保険法の改正により、給付日数等が改正されています(くわしくは「雇用保険法の改正」を参照)。たとえば、ここにあげた短時間労働者の失業手当の給付日数は、加入期間2年で、60歳未満であれば90日、60歳以上65歳未満で210日となりました。また給付日額も、最低2510円〜最高1万510円と若干アップし、たとえば賃金日額が5000円の場合には失業手当日額は3860円、6000円なら4430円、7000円なら4930円などと改訂されています。
 なお、短時間労働者とは、1週間の労働時間が20時間以上30時間未満(年収90万円以上)の者で、一般に呼ばれているパートが一概に短時間労働者とは限りません。その多くは週30時間以上働いており、一般被保険者と同じ扱いとなります。
ホームページへカエル

号外の目次へもどる