法のくすり箱
Q、昨日、駅前で「無料健康講座開催、粗品贈呈」のチラシをもらい、会場へ行ったところ、健康に関する興味深い話をして、最後に「本日に限りカルシウム食品を安く提供します」と言われてつい1箱5000円で2箱購入しました。帰宅後、1箱開けて食べてみましたが、内容と値段に納得がいかず、いまさらながら後悔しています。もらった領収書にはクーリングオフできるとは書かれてありましたが、やはり、食べてしまったものは無理でしょうか?
A、結論からいいますと、まだ開封していない1箱については8日以内であれば確実にクーリングオフできますが、開封した残る1箱については事情によりできる場合とできない場合があります。
クーリングオフとは「頭を冷やす」という意味で、法的には、契約した消費者が頭を冷やして考え直したところ、契約をやめたいと思えば、一方的に申し込みの撤回又は契約の解除ができるという制度です。この制度は特定商取引法(旧訪問販売)法などの法律によって定められ、多くの場合、契約の場所・契約した商品・契約に交わされた書面を要件に、その適用が判断されます。
まず、あなたの場合のように、営業所など以外の場所で契約したとき、はっきり売る意思を告げられずに呼び寄せられて契約したときはいずれも特定商取引法の対象です(法2条1項1、2号)。同法では、車や不動産などをのぞき、消費者トラブルの多い、物やサービスを法の対象として指定しています(法2条4項)。健康食品ももちろん指定されています。
特定商取引法の対象であれば、契約書(あなたの場合は領収書)を交わした日から8日以内なら、無条件で解約(クーリングオフ)できます。商品の返送にかかる費用は業者負担(着払い)です。
ただし、「指定消耗品」といって、一度使ってしまえばもはや解約できないものもあります(法9条1項2号、施行令5条、別表4)。たとえば、化粧品や殺虫剤・履物などで、健康食品もこれに当たります。したがって、開封してしまった1箱については原則としてクーリングオフできないわけです(未開封の分は当然OK)。
もっとも、次のような場合には、たとえ「指定消耗品」で開封されていてもクーリングオフが可能です。(1)クーリングオフできる旨を契約書に記載していないとき、あるいは、(2)この商品は開封・使用すればクーリングオフできない旨を契約書に記載していないとき、または、(3)誘導してその場で開封させるなどしてクーリングオフできないようにさせた場合などです(施行規則6、7条)。あなたの場合、領収書に(1)の記載があり、自宅でご自分の意思で開封したのですから(3)にも該当しません。そこで、(2)の記載がなされているかどうかをご確認ください。もし(2)の記載がなされていないなら、開封した分についてもクーリングオフができることになります。あなたは1万円を支払って領収書をもらったのでしたね。ちなみに、現金で代金全額を支払った場合に、その額が3000円未満のときにはクーリングオフは適用されません(施行令6条)。
なお、クーリングオフの手続きは、電話や口頭ではだめで書面でしなければなりません。ハガキでも手紙でもかまいませんが、トラブルを避けるためには内容証明郵便が確実でしょう(文例参照)。クーリングオフの効力は、この書面を発したときに生じるので、あなたが領収書の交付を受けてから8日目以内に書面を発送しておけば、いつ相手先に到着しても有効となります(法9条2項)。
いったん購入したものの、後悔したり、だまされたと思ったら、あきらめずにこういったクーリングオフを利用することです。また、平成16年11月11日からは、クーリングオフを妨害するような行為があれば、たとえ期間をすぎていてもいつでもクーリングオフできるなど、消費者保護のための一層の改正がなされています(くわしくはそよ風133号参照)。
また、こうした法的な措置がとれない場合でも、消費者センターなどに相談し、粘り強く交渉することが、悪質な方法で商品を売ろうとする業者に歯止めをかけることにつながるのではないでしょうか。さらに、消費者も、購入の際は契約書の内容をよく確認するなどの習慣をつけておくことも大切です(くわしくはそよ風38号・84号・102号・110号・133号参照)。

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