法のくすり箱
Q、先日青信号で横断していたところ、信号無視の車にはねられる事故にあい、3ヶ月ほども入院しました。ようやく退院した後、警察に問い合わせてみると、相手は私が信号を無視して飛び出したと話し、不起訴になったとの事でした。事故の相手は一度も見舞いにも来ず、全く誠意がみられませんし、どう考えても納得いきません。何か良い方法はないものでしょうか?
A、10年ほど前から、軽い事故でむやみに前歴者を増やさないためにということで、交通事故の起訴基準が引き上げられました。たとえば、けがが2週間以内で、示談も成立し、酒を飲むなど悪質運転でない場合には起訴をしない(起訴猶予)としたものです。しかしそれ以降、あなたのように重大な事故においても起訴される件数が減ってきているようです。
でも犯人が処罰されるためには、その事件が起訴されなければなりません。そしてその判断は検察官のみに委ねられているのです(刑事訴訟法247条)。
そこで、あなたのように不起訴処分(事件を裁判にかけないこと)に不服がある場合には、「検察審査会」というところへ申立てをすることができます。
この検察審査会は地方裁判所とその主な支部に置かれており(現在201ヶ所)、有権者のなかから無作為にくじで選ばれた11人の審査員で構成されています。これは、刑事手続のなかに広く一般の国民が参加し意見を反映させて、その適正を図ろうというものです(検察審査会法1・4条)。
申立ては、あなたのように事故の被害者や告訴・告発をした人などが書面ですることとなっています。書面には申立人と被疑者(相手方)の住所・氏名・年齢・職業、申立ての理由や事実関係、不起訴処分の年月日、担当検察官の氏名などの必要事項を書き、資料等を添付して提出します。提出場所は不起訴処分をした検察官が属する検察庁を管轄する検察審査会です。料金はいっさいかかりません(法30・31条・令18条、くわしくは最寄りの検察審査会事務局へ)。
審査会議では、捜査記録や提出書類等の検討を行い、必要に応じて担当検察官や申立人・証人などの尋問、官公署や公私の団体への照会、そのほか弁護士や医者・学者などに専門的な助言を求めることもあります(法35〜38条)。
ただ、審査されたことのある事案について再度申立てすることはできませんので、チャンスは一度だけです(法32条)。しかも、この50年で審査会が扱った事件数約13万件のうち再調査に付されたのは約5000件、さらに再調査の結果、起訴された事件は1000件にすぎません。再調査の結果を得るには、十分な資料と裏付けをもって申立てにのぞむことが肝要です。
あなたの場合も、起訴猶予の基準にまったく該当していないことを申立ての書面にくわしく書くことです。重傷で3ヶ月も入院したこと、相手は示談どころか見舞いにも来ていないこと、さらに青信号だったのに相手はウソの証言をしていることなどを具体的に記載します。そして証拠として、診断書や、もし得られるなら目撃者の証言なども添えて提出すれば万全です(なお、あなたの場合、相手は業務上過失傷害となりますので、刑事上の時効の5年以内に申し立てる必要があります)。
さて審査の結果は、(1)起訴相当(起訴すべき)、(2)不起訴不当(さらに詳しく捜査すべき)、(3)不起訴相当の3つに分かれます。基本的には過半数で決定しますが、起訴相当のときだけは8人以上で議決しなければなりません(法27条)。この議決書に法的拘束力はありませんが、検事正はその議決を参考にしてもういちど事件を検討し、起訴・不起訴を決めることになります(法41条)。
検察審査会法ができてから今年で50周年を迎えました。不起訴処分に納得がいかないときには、泣き寝入りしたりあきらめたりしないで、いちど申し立ててみてはいかがでしょうか。
* * *
ところで、検察審査会に申し立てるかどうかは別として、このままでは相手のウソで、あなたに重大な過失があったことになってしまいます。保険金の支払いや損害賠償(医療費・休業補償・慰謝料請求等、民事手続)などすべての面で不利になり、当然受けられる賠償がわずかしか、あるいはまったく受けられない事態にもなりかねません。相手になんの誠意も見られない現状のままなら、民事裁判も視野に入れて、一度法律事務所を訪れてみてください。

ホームページへカエル
「法のくすり箱」目次にもどる
次のページ(法のくすり箱「軽微な違反が重なって…初心者講習って?」)へ進む