法のくすり箱
Q、少しでも身体にいいものをと思い、「低脂肪」や「カルシウム増強」「カロリーカット」といったことばを信頼して食品を選んでいます。最近は、飲物やインスタント食品、お菓子などにもくわしい栄養表示がなされているようですが、毎日口にするものだけに気になります。こうした表示には何か一定の基準があるのでしょうか?
A、近年の健康ブームの中で、食物についても、いかに安全なものを供するのか、しかも消費者が選ぶ際に、その内容や栄養等をいかにわかりやすく表示するのかが問われています。
そこで平成7年には『栄養改善法』が改正され、「栄養表示基準」が新たに設けられました。「栄養表示基準」は平成8年5月24日から徐々に導入され、この4月1日からすべての加工食品を対象に完全に実施されています。この基準は、野菜や肉・魚といった生鮮食品をのぞくあらゆる食品に適用されます(輸入食品も含む)。もっとも、栄養成分を表示しようとする場合の基準で、成分表示を義務づけているわけではありませんので、どの加工食品にも表示されているというわけではありません。
栄養成分は、外から見てわかるようにはっきりと記載する必要があります。記載順序は、[1]熱量(カロリー)、[2]たんぱく質、[3]脂質、[4]糖質(または炭水化物)、[5]ナトリウム、[6]これ以外にとくに表示したい栄養成分があればその成分の順で、それぞれ100g・100ml・1食分などの単位当たりに含まれる量を表示しなければなりません(栄養表示基準第2条)。
さらに、特定の成分に関して、とくに強調して表示するためには、それぞれに細かく定められた数値をクリアしなければなりません。「高い旨(高・ハイ・多…)」「含む旨(含有・入り…)」「他の食品に比べて強化された旨(アップ・プラス…)」「含まない旨(ゼロ・ノン…)」「低い旨(低・ロー・少…)」「他の食品に比べて低減された旨(カット・ダウン…)」などいずれの表示についても、くわしい個々の規定があります。たとえば、「カルシウム豊富」と表示するなら、100g当たり180mg以上(飲物は90mg)カルシウムが含まれている必要があります。「低カロリー」なら、100g当たり40キロカロリー以下(飲物は20キロカロリー)でなければ「低」といった言葉は使えません(5条〜10条)。
さらに、とくに健康維持・増進に効果があると認められた食品は、「特定保健用食品」と呼ばれ、厚生省の許可を得て、特別のマークが付けられています(法12条・規則9・10条)。
たとえば、オリゴ糖や食物繊維入りの食品や飲物(整腸作用)、大豆たんぱく入り食品(コレステロール抑制)、鉄分・カルシウム飲料(カルシウム吸収促進・貧血予防)、パラチノースを主体にしたガム(虫歯予防)などがあります。
これらは、医学・栄養学的にみて、適切な摂取量が設定できることや、その成分によって健康の維持増進の効果が期待できるという根拠が明らかなもの、などという細かい許可要件をもとに、厚生省が個々に審査した上で許可されるものです。これは、「病気の治療は薬で、健康増進と病気予防は食で」という理念に基づいて平成3年9月からスタートした制度で、食品のもつ生体調節機能(身体のリズムを調節する働き)を活用しようというものです。許可商品はこの5月20日現在、108品目にのぼっています。
ちなみに、栄養補助食品・機能性食品(サプリメント)と呼ばれるものも数多くあります。これは「1粒でレモン10個分のビタミンC」とか「1粒で牛乳1本分のカルシウム」などと手軽さを前面に押し出して、薬局などで販売されているため、医薬品との区別がつきにくく、薬効を期待して利用している人も多いようです。しかし、医薬品として認められるのは、薬事法で定められている成分や、効能・効果等を明記してあるものに限られています。栄養補助食品は、ただ特定成分が強化されているだけで、医薬品のような薬効はあまり期待できません。過剰摂取により健康を損なうことも考えられますので注意する必要があります。
今後、ますます食品を通じた健康づくりが期待され、さまざまな栄養成分表示がなされた食品が増えていくことと思われます。その中から自分に必要なものだけを上手に活用すれば、食品選択の参考にしたり、健康増進をはかるためや、糖尿病や高血圧といった生活習慣病の予防などに役立てることができるのではないでしょうか。

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