法のくすり箱
Q、今までわが社では定年制を設けていなかったのですが、このたび業績不振等から、55歳を定年とすることを就業規則に盛り込もうと思っています。何か注意点等はあるでしょうか?
A、定年については、この平成10年4月1日から、60歳以上にすることが義務付けられました。今までは「定年の定めをする場合には、当該定年が60歳を下回らないように努めるものとする」という努力規定でしたが、これが義務規定へと明文化されたものです。ただし、高齢者が就くのに困難と思われる坑内作業の業務については例外が認められています(高年齢者等の雇用の安定等に関する法律4条・規則4条の2)。
あなたのように、これから定年制を設けようとしている事業所では、60歳以上の定年としなければなりません。また、今まで60歳未満の定年制をとっていた事業所でも、60歳以上に引き上げなければなりません。
もし、あなたが強行して55歳の定年制を導入したとしても、その定年制は無効となります。そして自動的に労働者にとって有利な、定年の定めがないものとされますのでご注意ください。これは、従来からの60歳未満の定年制を改正しないで放置している事業所についても同様です。
さて、就業規則の変更の手続ですが、労働者の過半数で組織する労働組合がある場合にはその労働組合、ない場合には労働者の過半数を代表する者の意見を聞かなければならないとなっています。この意見を記した書面を添付したうえで、労働基準監督署へ変更の届け出を出すことになります。この意見は必ずしも賛成である必要はなく、一部賛成や一部反対あるいは全部反対でも構いません(法90条)。
ところで、この60歳定年制導入時にすでに在籍している従業員の扱いが問題になるのではないでしょうか。
60歳定年制を設定すること自体は特段に違法なものではないと考えられますが、定年制がない就業規則で入社した労働者にとっては労働条件の引下げにあたるわけです。まだ比較的若い従業員にはそのまま適用しても問題はありませんが、すでに60歳を過ぎていたりもうすぐ60歳を迎える従業員に対しては何らかの対策を考えたほうがよいでしょう。たとえば、退職金の上乗せや、段階的な定年制にするという暫定措置を就業規則に盛りこむなど、労使双方が少しでも満足できる環境をつくることをおすすめします。
なお、60〜65歳の継続雇用に対しては給付金(雇用保険法61条〜61条の3、 「そよ風」第75号参照)や助成金(高年齢者等の雇用安定法52条)等いろいろな制度があります。このような制度も利用し、雇用・賃金体系や役職制度等をこの機会に再考して高齢者の雇用を考えてみるのもひとつではないでしょうか。

ホームページへカエル
「労使トラブルQ&A」目次にもどる
次のページ(定年の延長と再就職先の拡大−高年齢者雇用安定法)へ進む