法のくすり箱
Q、
雑誌やテレビ等の懸賞に応募するのを楽しみにしている主婦です。先日、これまでで最高の100万円の現金が当たり、喜んで夫に報告したところ、夫に「申告しないと脱税になるのでは」と言われました。本当に申告しなければならないでしょうか?
A、
「所得」と呼ばれるものは10種類(
下表
)に区分されています(所得税法2条2項)。
所得の種類
(1) 利子所得
(2) 配当所得
(3) 不動産所得
(4) 事業所得
(5) 給与所得
(6) 退職所得
(7) 山林所得
(8) 譲渡所得
(9) 一時所得
(10) 雑所得
あなたが当たったような懸賞の賞金や福引き等の当選金、競馬・競輪・競艇等のギャンブルで得た所得は、このうち「
一時所得
」として扱われています(同34条)。このほか、死亡や入院等で生命保険の一時金が下りた場合等がこれにあたります。つまり、(1)〜(8)以外の所得で、継続的な収入以外の一時的な収入であり、しかも、労働・サービスまたは資産の譲渡の対価としての性質がないものが一時所得の対象です。ですから、一時所得である懸賞の賞金は、確かに課税の対象とみなされ、確定申告の際に申告する必要があります。
しかし、一時所得には
50万円
の
特別控除
が認められているので、50万円以下の懸賞金であった場合は、申告の必要はありません(同34条3項)。それ以上なら、この特別控除額50万円を引き、さらにこれから必要経費を引いたものの半額が課税対象となります(同34条2項・22条2項)。
したがって、たとえばハガキ代や交通費等で1000円を使用したとすると、これが必要経費として控除できますので、「100万円−50万円−1000円」の2分の1、つまり24万9500円に対して課税されることになるわけです。
一時所得は他の収入と合算して、総所得として課税されます(
総合課税
)。
もし、あなたが専業主婦で1年の収入がこの100万円のみなら、この課税額24万9500円からさらに38万円の基礎控除が受けられますので、結局、課税額はゼロとなり、申告の必要はありません。
また、給与所得者であったなら、通常、確定申告の必要はありませんが、給与所得や退職金以外の所得が20万円を超えると、確定申告が必要になります(同121条1項1号)。すなわち、懸賞金額から、特別控除の50万円と必要経費を引いた金額が20万円を超えた場合には、やはり確定申告の必要があります。
なお、
宝くじ
については、初めから
非課税扱い
と定められているので、たとえ高額が当たっても申告する必要はありません(当せん金付証票法13条)。
ちなみに、「黙っていてもわからないだろう」と思ってごまかした場合、万が一見つかれば、所得税の過少申告、または無申告とみなされ、35〜40%の重加算税、延滞税等が課せられることもあります(国税通則法60〜69条)。
なお、確定申告の時期は、2月16日から3月15日までとなっています。
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