
法のくすり箱
Q、最近テレビなどで、スポーツ選手の日本への帰化についての報道をよく耳にします。日本への帰化は難しいとも聞きますが、どんな条件や手続きで帰化できるのでしょうか?
A、帰化による日本国籍の取得については、国籍法で定められており、帰化は法務大臣が許可します(法4条)。
では、帰化の許可要件とはどのようなものなのでしょうか。以下、順に述べていきます。
(1)引き続き5年以上日本に住んでいること(通算して5年ではこの条件に当てはまらないのでご注意ください)。
(2)20歳以上でその外国人の本国法によって能力を有すること。
(3)素行が善良であること。
(4)自分自身あるいは配偶者や親族の資産・技能によって、生活が十分成り立つこと。
(5)帰化した際に元の国籍を離脱すること、あるいは無国籍者であること(難民などの場合で元の国籍を離脱できない者は事情により緩和)。
(6)日本政府を暴力で破壊することを企て主張したり、そういった活動を行う政党や団体を結成・加入したことがないこと。
上記の条件をすべて備えていなければ、帰化は許可されません(法5条)。
ただし、いくつかの緩和条件が定められています。
- ☆日本に強い血縁・地縁関係があるとき(法6条)
- たとえば、日本生まれで、引き続き3年以上日本に住んでいるか、あるいはその父母の一方も日本で生まれた者などは、(1)の条件を満たしていなくても帰化を許可できる。
- ☆配偶者のどちらかが日本人のとき(法7条)
- 引き続き3年以上日本に住んでいて現在も住んでいるか、または婚姻の日から3年を経過し、引き続き1年以上日本に住んでいれば、上記(1)(2)の条件にあてはまらなくても、帰化を許可できる。
- ☆子どもについての特別な措置(法8条)
- 帰化した者の実子で現に日本に住んでいる場合や、日本人の養子で引き続き1年以上日本に住んでいる者(ただし、縁組のとき本国法で未成年)、日本で生まれ出生のときから無国籍で引き続き3年以上日本に住んでいる者などについては、前記(1)(2)(4)の要件がなくてもかまわない。
- ☆日本に特別な功労のあるとき(法9条)
- 前記の(1)〜(6)の規定にかかわらず、国会の承認を得て許可する(ただしこれまでの実績はゼロ)。
帰化許可の申請は、住所地を管轄する法務局に本人が直接出向き、書面で提出しなければなりません(規則2条)。ただし15歳未満のものが帰化申請する場合には、法定代理人(親権者・後見人)が届け出ることになっています(法18条)。
また、家族で国籍が別々になるのは好ましくないので、実務上、家族・世帯単位ごとに帰化申請するよう指導されています。
まずは当該法務局へ出向いて、相談するところから始まります。そこで提出書類の作成や取り寄せなど具体的な相談にのってもらえます。
申請者が作成する書面としては(ア)帰化許可申請書(申請者一人ごとに作成)、(イ)親族の概要を記載した書類(一世帯ごと)、(ウ)帰化の動機書(15歳未満のものは不要)、(エ)履歴書(15歳未満のものは不要、経歴によって現勤務先の在勤証明書・卒業証明書・運転免許証の写し等を添付)、(オ)宣誓書(15歳未満のものは不要)、(カ)生計の概要を記載した書類、(キ)事業の概要を記載した書類、(ク)その他(自宅付近の略図など)があります。これらの書類の書き方や形式などについては見本があり、法務局で手に入れることができます。
さらに、申請者の本国や日本の役所から取り寄せる書類は、以下のようになっています。(a)住所を証明する書類(外国人登録済証明書・住民票など)、(b)国籍を証明する書類(国籍証明書・戸籍謄本・出生証明書など。またパスポートがあればその写しも提出する)、(c)親族関係を証明する書類(本国発行の戸籍謄本や出生証明書・婚姻証明書、日本の戸籍謄本と住民票など)、(d)その他(給与証明書や納税証明書など)です。その他ケースバイケースで必要な書類を指示されますので、指示に従って書類をそろえ提出となります。
書類はそこで点検・受付をされ、審査が開始されます。そして調査担当者による面接・追加書類の取り寄せ等をした後、法務省へ書類が送付されます。そこで法務大臣が審査・決裁をして、帰化の許可・不許可が決定されます。許可されたときには官報に告示されその日から日本国籍を取得し(法10条)、本人には法務局から通知されます。
現在、相談から始まり帰化許可・不許可が出るまで、約1年〜1年半かかるのが実情のようです。

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