
法のくすり箱
Q、今度、タイへ旅行を計画していて、おみやげにランを買いたいと思っています。帰国のとき検疫などの規制があると聞きましたが、日本への持ち込みはできるでしょうか?
A、日本への植物の持ち込み(輸入)は、「植物防疫法」で規制されています。この法律は、輸出入植物や国内植物を検疫し、植物に有害な動植物を駆除し、またまん延を防止し、国内の農業を守ることを目的としています(法1条)。
植物検疫では、輸入の際に、検疫の対象となるのは、植物とその容器包装です。鉢植えや切花・種子・球根はもちろん、たとえば生果実や穀類・豆類・薬用植物・ドライフラワーなども含まれます。ただし、木工品・竹製品・籐・コルクなどの加工製品、そのほか乾燥果物等は検疫の対象とはならず、自由に日本国内に持ち込めます。
植物検疫では、輸入が最初から禁止されているものが多数ありますのでご注意下さい(法7条1項、規則9条)。たとえば、土・土付きの植物は一切持ち込めません。また、検疫有害動植物として、まん延した場合に有用な植物に損害を与えるおそれがある有害動植物で省令で定められたもの(法5条の2、規則5条の2)も当然輸入禁止です。加えて、特定地域からの輸入や経由植物についても、持ち込み禁止品が数多く定められています。たとえば、ヨーロッパや中東からのオレンジ(イスラエル・スペインの一部はのぞく)東南アジアなどからのパパイアなども禁止品です。たとえ免税売店で買った商品でも禁止品は禁止品ですので、国内には持ち込めませんからお気をつけ下さい。
なお例外として、試験研究や、博物館・植物園など公共の施設で標本として展示・保管したり、犯罪捜査のための証拠物の場合には、許可を受け輸入することはできます(法7条、規則6条の2・7・8条)。
これらの禁止品以外なら、輸出国の政府機関による検査の結果、検疫有害動植物が付着していないことを記した「検査証明書」を付けて(法6条1項)、税関検査の前に植物検疫カウンターで検査を受けることになります。
植物検疫カウンターでは、検査証明書の有無や輸入禁止品でないかどうか、検疫有害動植物が付いていないか等の検査を受け、検査合格証明書や輸入認可証明書を発行してもらって、輸入となります(法8条、規則19条)。
さてあなたの場合は、タイのランは輸入禁止品ではないので検査証明書さえあれば、切り花なら、植物検疫所で5分ほどの検査で簡単に国内に持ち込むことができます。もし根付きのものを持ち込みたい場合は、土は輸入禁止ですので、現地で十分に土を落として根を濡れた新聞紙でくるむなどして持ち帰り、検査を受けて下さい。検査証明書があり、とくに問題がなければこれも5分くらいの検査で持ち込めます。なお検査証明書がない場合でも、植物検疫所は持込みの可否を検査してくれます。
ただし、球根(ゆり・チューリップ・ヒヤシンス等)、苗木(かんきつ類・りんご等)やじゃがいも・さつまいも・さとうきびなどは、たとえ検査証明書があったとしても、約1年間の隔離栽培が必要ですのでご注意下さい(法8条7項、規則14〜17条)。
なお、平成9年4月1日から植物検疫法の一部を改正する法律が施行され、より適切・迅速な検疫を行うための措置が新たに整いました。
まずひとつは、栽培の用に供しない植物であって、検疫有害動植物の付着のおそれが少ないもの(アーモンド・カシューナッツ・こしょうの実など)については、「検査証明書」がなくても輸入できるようになりました(法6条1項、規則5条の3)。
さらに、有害動植物の中で検疫上は対象としないものを特定(コクゾウムシ・カツオブシムシなど)し、これらについては消毒等の措置はとらないことになりました。
最後に、輸入の時点では発見が難しいけれども、栽培地で検査すれば容易に発見できる場合(たとえば、アメリカ合衆国のとうもろこしのとうもろこし萎ちょう細菌病菌・とうもろこし葉枯細菌病菌など)には、先の「検査証明書」に加えて、栽培地での検査証明書も必要です(法6条2項、規則5条の4)。
このほか、くわしくは事前に、空港内等の植物検疫所へお問い合わせ下さい。

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