
法のくすり箱
Q、 私はオーストラリア人の男性と5年前に結婚し、日本で暮らしていますが、お互いの考え方の違いなどから、離婚しようかと話し合っています。どのような手続きで離婚することになるのでしょうか?
A、 お二人は国籍が違うわけですから、日本の法律とオーストラリアの法律が関係してきます。このように複数の国の法律が関係してくるような場合に、どこの国の法律を適用するのかといった、国際私法に関する規定を定めている法律が「法例」といわれるものです。
この「法例」のなかの、国際結婚・離婚・親子等に関する部分が改正され、1990年(平成2年)1月1日から施行されています。改正前の法例は、「婚姻の効力は夫の本国法による」となっているなど、日本人女性にとって不公平なものでしたが、現在ではこれが是正されました。
新しい法例では、婚姻の効力は、(1)夫婦の本国法が同一の場合にはその法律、(2)同一でない場合には、夫婦が居住し現実に生活を営んでいる場所が同じときは居住地の法律、(3)それらも違うときには夫婦に最も密接な関係のある地の法律によることとなりました(法例14条)。
離婚に関してもこの婚姻の規定が準用されます(16条本文)。但し、夫婦の一方が日本人で、主に日本で暮らしているなら、日本民法に基づいて離婚を認めるとしました(16条但書)。つまり、あなた方のように、片方が日本人で日本に住んでいるなら、両方の合意さえ得られれば、日本民法により「協議離婚」という簡単な手続き(離婚届に記入し役場に提出)で離婚ができるのです〔合意ができなければ家庭裁判所での調停→地方裁判所での訴訟手続きとなる〕。これによって日本の戸籍上は離婚が成立し、再婚ももちろんできますので、あなたが将来も日本で生活していくならまったく問題はないでしょう。
もっとも、相手の国にもその旨を届けなければ、その国ではまだ二人の結婚は続いていることになります(このように一方では有効、もう一方では無効とされるような結婚のかたちを跛行婚という)。
相手国が協議離婚を認めている国(イギリス・韓国・フィリピンなど)なら、あるいは相手国の法律で「住所地の法律による」という規定がある国(アメリカ・カナダ・フランスなど)ならば、日本での離婚届受理証明書等の必要書類を相手国の領事館などに提出すれば簡単に離婚は成立します。しかし国によっては裁判での離婚しか認めていない国や、離婚自体が認められていない国もありますので、具体的には各国の領事館等に問い合わせることが必要です。
さて、お尋ねのオーストラリアについて問い合わせてみましたが、オーストラリアでは海外での結婚に関しては本国への登録を受け付けていないとのことです(1995年1月1日以降)。ですから当然、離婚の届出も必要ないことになります。
しかしあなたの場合は時期的に登録をされていたのではないでしょうか。もし登録されていたのなら、オーストラリアでは裁判離婚しか認められていませんので、登録を取り消すには現地の裁判所での手続きが必要なようです。ただオーストラリアの法律では1年の別居期間の証明さえあれば簡単に離婚が認められるとのことでした。
ところで、あなた方にはお子さんがいらっしゃいますか。親子間の法律関係は、(a)子供の本国法が父母どちらかの本国法と同じならその国の法律、(b)そうでないときには子供が居住し現実に生活を営んでいる場所の法によると定められています(21条)。お子さんの国籍が二重国籍あるいは日本国籍なら日本民法が適用されることになります。そのため子供さんが未成年ならば、離婚の際にその親権者を定めておく必要があります。もしお子さんがオーストラリア国籍なら、親権に関してオーストラリアの法によることになりますので領事館へお問い合わせください。
さらに夫婦の財産については、結婚時に特別な契約を結んでいないかぎり、婚姻・離婚と同様の法律が適用されることになります(15条)。

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