法のくすり箱
Q、先週、私の住んでいる地域は激しい地震に見舞われました。私の家は倒壊を免れましたが、ご近所ではけが人もでたのです。
そして震災直後、私の家では4台あるテレビのうちA社製の最近買ったばかりの1台が火を吹いて燃え出したのです。私は毛布をかけるなど必死になってようやく消しとめたという忘れられないハプニングがありました。後でやってきた消防の人達もこのテレビからの出火を消せなかったら、水の出なかったこの地域一帯は大火事になったであろうといいました。
A社の人達は原因を調べるといってテレビを持帰り代わりに新品を届けてくれました。しかしただそれだけです。私はそのテレビの出火のためやけどを負い部屋をすすだらけにし、多くの家具や絵画をそこないました。他の3台のテレビはどうもなかったのです。
A社に対してテレビの出火の責任を問えないでしょうか?
A、平成7年7月1日に施行された「製造物責任法(PL法)」によって、消費者は、より容易に、メーカー(製造業者)に対して、欠陥商品の責任を問うことができるようになりました。
これまでは消費者がメーカーの過失(メーカーは危険を予見できたとか、危険を回避するための措置をおこたったなど)を立証しなければならず、専門知識に乏しい消費者にとってはきわめて厄介でした。そこでPL法は、消費者が製造物に欠陥のあることさえ立証すれば、過失については立証がなくともメーカーは責任を負うこととしたのです。
しかし、一般の消費者にとっては製品に欠陥のあることを立証するのも容易ではありません。火をふいたカラーテレビにどういう欠陥(ハンダ付け不良・配線ミスなど)があったのかを明らかにせよといわれても困ります。製品の欠陥の立証は、社会通念上欠陥の存在について納得できる程度でよいとされていますが、抽象的ではっきりしません。
そこで、実際の裁判では、テレビから火が出たことをもって欠陥を推定し、メーカーが欠陥がなかったことを立証しないかぎり責任を免れないものとする論法がとられるものと考えます(参考:大阪地裁平成6年判決)。あなたは、A社に責任を問うにあたって、ただテレビから出火したことを立証すれば足りるのです。
もっとも、震災の程度いかんでは、テレビに課された安全性確保義務の限界を超えることにならないかどうかの問題があります。しかし、テレビが他の物品と強く衝突するなどの特段の事情がない限り、大きくゆれる程度ではメーカーA社の安全性を確保する義務は解除されないと考えます。
ところで、事故品であるテレビが持ち去られていることは、欠陥の確認や立証に大きな障害です。A社に対し、焼損したテレビを新品に取り替えてくれたことだけで満足できないのなら、その新品を返品しても、早急に事故品の返却を請求して下さい。出火によって生じた種々の損害については相当の賠償をすべきケースであることが十分に考えられます。改めてA社へ申入れるとともに、納得できない場合には法律事務所へご相談になることをおすすめします。
※ 「製造物責任(PL)法」についてくわしくはそよ風76号参照。

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