法のくすり箱
Q、先日、裁判所から突然、「口頭弁論期日呼出状」や「訴状」などと書かれた書類が送られてきました。その訴状を読んでみてもまったく身に覚えのないことばかりです。呼び出された期日も都合が悪く行けそうにないので、このまま放っておこうと思いますが、大丈夫でしょうか?
A、裁判所からの書類は「特別送達」といって、いつ誰の手に届いたかが記録される形で配達されます。あなたに呼出状が送達されたことが確認されたからには、呼び出された期日に無断で欠席しても、裁判自体は開かれます。当日相手が出席していれば、相手方は裁判所に自分の主張を一方的に述べることとなります(民事訴訟法138条)。
ところで民事裁判では、あなたが相手方の主張を明らかに争わないときには、あなたは相手方の主張している事実を認めたものとみなされてしまいます。またこの考え方は、あなたが法廷で争わなかった場合に限らず、あなたが期日に欠席したために相手側の主張を争うことができなかったときにも準用されます(擬制自白、140条1・3項)。さらに、この呼出状がきて、その裁判が行われるのを知っていたのに欠席すると、あなたは意見を言う権利すら失ってしまいます(責問権の喪失、141条)。
裁判官も神様ではありません。当然ながらあなたが申し立てない事実や事情を斟酌することを裁判所に求めることはできません。裁判所は、当事者が申し立てない事項についてまでは、判決を下すことができないのです(186条)。そのため当事者は、出廷して、自分の意見や事実との相違点などを述べなくてはなりません(125条)。
この結果、あなたが出廷せずに放置しておくと、裁判所は相手側からだけの主張等を考慮・判断し、判決を出してしまいます。このように、裁判に欠席した結果出された判決を「欠席判決」といいます。呼出状にも「何もしないでこのまま放っておくと、相手方の言い分どおりの判決が出て…」といった但し書きがありますので注意が必要です。
さて、呼び出された当日は都合がつかないとのことですが、それならばその旨を裁判所に伝えて期日の変更をしてもらうことです。そうすれば裁判所は両者の都合の良い日を打ち合わせて新たな期日を決定してくれます(152条)。くれぐれも放置しておいてはいけません。
また、呼出状に、「答弁書」を提出するようにと記載があったと思います。これは、訴状に書いてある相手方の主張に対して、自分の反論や意見を述べる書面です。書き方等は担当の裁判所に問い合わせれば教えてくれますので、できれば事前に提出しておいたほうがよいでしょう。
裁判は自分でもできますが、慣れないことも多く不安かと思います。また裁判には独特の手続きや考え方などもありますので、知り合いの弁護士に委任して裁判の代理人になってもらい、進めるのもひとつです。あるいは弁護士に相談しながら、あなたが出廷する方法もあります。また知り合いに弁護士がいないときには、あなたの住所地の弁護士会に行けば弁護士を紹介してくれますので、放置せずさっそく相談に出向いてください。

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