法のくすり箱
Q、
私の友人Aとその妻Bの夫婦は、Bの妹の子どもCを生まれたときから夫婦の実子として出生届をして育てています。Cは、将来、AやBの実子として相続することができるのでしょうか?
A、
生まれた子どもを、その親の子どもとしないで、他人の子どもとして届け出る――ときにこのようなことが、不倫がらみのニュースとして芸能誌の話題になることがあります。また家系の継続に関心の強い一昔前の世代では、どうしても子どもをと願っている夫婦が、他人の子どもを最初から実子として届出をし、自分たちの戸籍に入れることも、大目にみられる状況がありました。
しかし、こうして実子として出生届がなされた子どもは、両親の相続の段階で大変なリスクを負っているのです。というのは、この子どもの出生届はあくまで「虚偽」ということで「無効」なのです。すなわち、戸籍上の親との間には法的にはなんらの関係が生じていないのです。
せめて養子としての身分を与えられないかという議論がありますが、それを認めると、未成年者の養子縁組に際しては、子どもの福祉の見地から家庭裁判所の許可を必要としている法の建前(民法798条)が崩れてしまいます。そこでこの場合は、A・BとCは、法的には親でも子でもないのです。
しかし、戸籍の上ではCは立派にA・Bの実子なのですから、普通は、A・BとCは戸籍の記載に従って親子として扱われます。そしてCは、法定相続の上で、第1順位の相続人である「子ども」として相続が行われます。ですが、この子どもCの親A・Bに兄弟姉妹又はその子どもなど、民法上の法定相続人がいる場合、それらの人は利害関係人としてCの相続を否認し、自分たちに相続をなさしめるように「請求」することができるのです。
もっとも、この「請求」はできるといっても、前提として、戸籍の訂正と5年以内の請求という次の2点をクリアしていなければなりません。まず、この請求に際しては、子どもCと両親A・Bとの間の親子関係の不存在を確認する裁判を起こして戸籍の訂正をしなければなりません。さらに、それらの人は5年以内(もっともこれは単にA・Bが死亡したことを知ったときから5年ではなく、「Cが法律上A・Bの子ではないので自分に相続権があること」を弁護士などの専門家から聞いたり本紙のような解説で知ったときから5年以内。判例)に請求しなければならないという制約が伴います(民法884条)。結構、手間がかかり煩わしいのです(くわしくは法律事務所などに相談して下さい)。
Cを実子として届け出たA・Bの遺志の尊重に加え、手続きが上のように煩わしいこともあり、このような子どもも、法的地位を有しないにもかかわらず、事実上その地位を脅かされることなく、世間的には立派に両親の実子として通用していくことがみられるのです。
☆★法定相続★☆
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- 民法では、とくに遺言がないかぎり相続人となるべき者が決められ(886〜895条)、その相続分も定められている(900条)。これを法定相続とよび、この法定相続を受けるはずの者、つまり現状において当然相続人となるであろう者は推定相続人とよばれる。
参考までに主な法定相続のケースを例示する(カッコ内が法定相続分)。
(1)配偶者がいる場合 -
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- a子供がいるとき――配偶者(1/2)と子供(1/2を各等分)
b子供がなく父母がいるとき――配偶者(2/3)と父母(1/3)
c子供・父母ともなく兄弟姉妹がいるとき――配偶者(3/4)と兄弟姉妹(1/4を各等分)
(2)配偶者がいない場合-
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- a子供がいるとき――子供(各等分)
b子供がなく父母がいるとき――父母(各等分)
c子供・父母ともなく兄弟姉妹がいるとき――兄弟姉妹(各等分)
なお子供や兄弟姉妹が死亡していても、それらに子供がのこされていれば、その遺児に親の相続権が与えられる(代襲相続)。
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