法のくすり箱

、新聞で裁判所の不動産競売についての公告を見ました。ちょうどマイホームをさがしているところで、手頃な物件がとても安く書かれています。競売不動産にはややこしいものが多いから手を出さないほうがいいとも聞きましたが、そんなにこわいものでしょうか?また手続きはむずかしいのでしょうか?

、各地の地方裁判所では、債務の弁済ができなくなった人が所有する不動産を差し押さえてこれを売却し、その代金を弁済にあてています。これが不動産の競売というものです。バブルの崩壊によってこうした競売物件は近年急増しています。
 確かにトラブルがあって競売となったわけですが、競売物件だからといってその不動産そのものに問題があるとは限りません。ふつう一般に不動産を購入する場合でもリスクを伴うのは同じで、大きな買物ですので、よく調査・確認をする必要があるのは当然ですが、競売だからととくにこわがる必要はありません。
 しかし、競売特有のシステムもありますので、ここでは、もっとも一般的で代表的な「期間入札」の方法について説明しましょう。
 新聞の公告にも入札期間が記載されていると思いますが、その期間内(1週間〜1ケ月の範囲で裁判所が決定)に公に入札して最高価格をつけた人に売却するというものです。 入札期間開始の2週間前までに競売が行われることが公告されます。裁判所や市区町村役場の掲示板、あるいはご覧になったように新聞や住宅情報誌に掲載されることもあります。入札期間や開札期日とその場所、物件の表示と最低売却価格などの概略が記載されていますので、これを見てめぼしい物件があれば具体的に調査することとなります。
 その方法ですが、裁判所には@物件明細書、A現況調査報告書、B評価書の3つが備えつけられていますので(入札期間開始の1週間前までに備えおかれる)、まずこれでよく確認して下さい。
@物件明細書
 不動産の表示とともに、売却された後も引き継がなければならない賃借権や地 上権の有無とその内容が記載されている。

A現況調査報告書
 裁判所の執行官によって作成されたもので、宅地や山林といった土地の現況地目や建物の種類・構造など、物件の現在の状況が写真も添えて記載されている。また、占有者がいる場合(従来の所有者など競売後は当然立ち退くこととなる者と、賃借人のように競売後も引き続きその地位が保障されて住み続ける権利がある者とがある)は、その氏名や状況について(他に訴訟が起こされている等も含めて)くわしく記される。

B評価書
 評価人(不動産鑑定士の中から裁判所が選任)が作成するもので、これを元に最低売却価格が決まる。物件の評価額とともに、周囲の環境の概要や公法上の規制などが記載されている。また不動産や近隣の図面も添付されている。

 これらに加えて(他の不動産でも同じですが)、必ず現地に行って自分の目で物件を確認し、さらに法務局でその物件の登記簿謄本をとって権利関係を確認することが肝要です。ただ競売物件の場合は、建物の中にまで入ることは原則としてできませんのでご了承ください。
 さて、入札に参加する方法ですが、裁判所内の執行官室を訪ねて、入札書等の必要書類をもらいます。記載事項はむずかしくはありませんが、裁判所の手続きですので、正確な記入を心がけて下さい。
 まず入札書ですが、これはひとつの物件につき一人一回しか提出できません。入札額はもちろん最低売却価格より高くなければなりません。また金額欄を訂正したり書き直した入札書は無効です。住所・氏名も住民票等に記載のとおり正確に記入して下さい。この入札書を所定の封筒に入れて、入札期間内に提出することになります(なお法人の場合は資格証明書を、夫婦などで二人以上が共同で入札する場合は執行官室で共同入札許可書をもらって同封する)。
 その際、保証金を同時に提供しなければなりません。金額は原則として最低売却価格の20%で、裁判所指定の口座に振り込んで支払い、保証金振込証明書用紙を入札書に添えて提出します(金融機関と支払保証委託契約を締結する方法もある)。
 この入札書等は、直接裁判所の執行室へ持参するか、あるいは書留郵便で入札期間内に必着するように送付します(入札期間経過後に到着したもの・普通郵便で送ったものは無効)。
 こうして開札期日に各入札書が開封され、問題がなければ、後日改めて、最高価格をつけた人に売却決定が出されます。
 もしあなたが最高価格を付けていなければ、開札期日後6日以内に保証金は返還(振込・送金)されます。一方、あなたが最高価格を付けていたなら、裁判所から代金の納付期限の通知がありますので(売却決定が確定した日から1ヶ月以内の適当な日)、この日までに、すでに納めた保証金を差し引いた金額を必ず納付しなければなりません。もしこの期限までに代金を納められなければ、その物件を買い取る資格を失うばかりか、入札の際に提供した保証金も返還されませんので細心の注意が必要です。
 こうして代金が納付されると、裁判所が登記手続きをとってくれた後(登録免許税はあなたの負担)、晴れて不動産の引渡しとなります。もし従前の所有者などが占有していて任意に出ていかなければ、代金納付から6ヶ月以内に裁判所に申し立てて引渡命令をもらい、強制的に立ち退かせることもできます。
 このように入札から代金納付まではあまり期間がありません。しかも代金を納付したあとに登記手続きがとられるため、当該物件を担保にローンを組むこともできません。そこで入札に際しては、あらかじめ資金の目処を立てておく(登記完了後はその物件を担保にローンを組めるので、とりあえず他の物件を入担しあとで担保の差替えをする等)ことが肝要です。また権利関係が複雑な物件はなるべく避けるか、弁護士に相談されることをお勧めします。

▽▲資格証明書▲▽

株式会社などの法人登記のうち、代表者についての登記事項を証明するもの。代表者の住所・氏名及びその資格、そして代表権に関する制限がないことを証明する。法務局に出向き、証明申請書に必要事項を記入して提出すると、登記官が証明印を押して返却してくれる。手数料は登記印紙で400円。(証明申請書・登記印紙は法務局内で販売している) このほかに会社の代表者の資格を証明するものとして、会社の登記簿謄本や代表者(役員欄)の抄本も一般的に用いられる。

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