法のくすり箱

.仕事の都合でアメリカに2年ほど住むことになりました。わが家では犬を飼っているのですが、子供がどうしても連れていきたいとせがみます。肉などを日本に持ち帰るときなどきびしい検疫があると聞きますが、犬を海外に連れていくのは簡単なのでしょうか?また、2年後には日本に戻ってくることは確実なのですが、帰国の手続きも大丈夫でしょうか?

.犬の検疫については、狂犬病予防法で定められています(7条、犬の輸出入検疫規則)。狂犬病は人を含むすべてのほ乳類に感染し、発病すればほぼ100%死に至るというおそろしい病気で、現在のところ有効な治療方法はありません。そのため飼い主には年に一度の狂犬病の予防接種が義務付けられています(法5条)。もっとも日本では昭和32年から発生していないため、犬の出国手続きは比較的容易で、入国は少しきびしくなっています。
 まず出国ですが、狂犬病の予防接種の際に獣医師が発行した注射済証(もし紛失した場合は、接種を受けた獣医師のところで再発行してもらえる)を持って犬とともに空港等に行きます。そこで動物検疫所に備付けの輸出検疫申請書に必要事項を記入の上提出すれば、おもに書類のチェックを受けて、輸出検疫証明書が交付され出国となります(約20〜30分)。ただ予防接種を受けてから30日たっていない犬や1年を超えている犬などは長時間係留、検疫されることがありますのでご注意ください。
 さて、幸いなことにアメリカの場合は先ほどの輸出検疫証明書があれば人間と同様の手続きで入国することができます。しかし、国によっては事前に飼い主がその国の政府の許可を取らなくてはならない場合(イギリスやオーストラリア等)や、ニュージーランドのように日本からの犬は受け入れない国もありますので、出国前にあらかじめ最寄りの検疫所や領事館等で確認して下さい。
 次に帰国するときの手続きについてですが、これには自分のいた国の政府機関によって発行された2つの証明書が必要となります。それは、@健康証明書(狂犬病にかかっておらず、その疑いもないことを記した証明書)、A狂犬病予防注射証明書(接種年月日とワクチンの種類の明記が必要)です。日本に到着後、空港内等の動物検疫所で備付けの輸入検疫申請書に記入の上、前述の2つの証明書を提出します。この書類に問題がなければ犬は14日間係留され観察された後、輸入検疫証明書が交付され、晴れて入国となります。
 しかし、この書類が揃っていなかったり、あるいは内容に問題がある(狂犬病の予防注射をして30日たたない、または生ワクチンなら1年、不活化ワクチンなら180日以上たっているなど)ときには、この係留期間は延長され、15日〜180日観察処分にまわされることとなります。
 また、狂犬病がほとんど発生しない地域として指定されたところ(イギリス・オーストラリア・ニュージーランド・シンガポール・台湾など)から入国する場合には、相手国政府の発行した証明書(狂犬病にかかっておらずその疑いもないこと、その国で6ヶ月間または生後ずっと飼われていたこと、その国に過去6ヶ月間狂犬病の発生がなかったことの3点を証明したもの)があれば12時間以内の簡易な審査で入国できますのでお問い合わせください。
 残念ながらアメリカはこの地域に入っていませんので、前述の原則14日間係留となります。
 なお同じペットのについては、日本では検疫の対象になっていません。したがって猫の場合は、航空会社等から健康証明書などを要求されることもありますが、基本的には出入国ともにフリーパスです。もっとも国によっては検疫対象となっているところもありますので事前に確認が必要です。
 またこのほか検疫については検疫法や、動物(牛・羊・馬・うさぎ・ミツバチなど)や畜産物(肉・皮・羽毛・角・ハムなど)は家畜伝染病予防法で、植物や害虫等は植物防疫法で、それぞれ定められています。

ホームページへカエル

「法のくすり箱」目次にもどる
次のページ(法のくすり箱「海外でパスポートを紛失したら」)へ進む