Q.以前、国勢調査の調査員が調査票を配布しにやって来ました。ところが、この調査員が私の家の近所の方でなんとなく記入が億劫です。もし調査に協力しなかったら、何か法的に罰せられたりするのでしょうか?
A.まず、国勢調査について説明しましょう。国勢調査とは、政府が日本に住んでいる人全員を対象に行う人口等に関する全数調査のことです(統計法4条1項)。この調査は大正9年に初めて行われ、以後10年ごとに実施されています。ただし中間年の5年目には簡易な調査が行われます(同2項)。最近では1995年(平成7年)に簡易調査が行われ、2000年(平成12年)には本調査が行われる予定です。
国勢調査の結果はさまざまな方面で活用されます。日本の人口の実数を正確に把握することにより、年齢階層別あるいは職業別また産業別など多くの統計が作成されることになります。そしてこれを基礎資料として利用して、選挙区ごとに議員定数が決定され、多くの行政施策(住宅建設計画・福祉対策・雇用対策など)がたてられるのです。さらに、将来の人口や出生率の推計にも役立てられます。これらの公表された結果は、学校教育や会社の経営方針の決定などの資料として民間においても利用されます。
調査は、実施年の10月1日午前0時現在で、3ヶ月以上住んでいるか住む予定である人と場所を対象に行われます(国勢調査令3・4条)。
ちなみに1995年の簡易調査の内容は、世帯員に関する事項として@氏名、A性別、B出生年月、C世帯主との続柄、D配偶者の有無、E国籍、F就業状態、G勤務先、H仕事の種類、I自営か勤めか、J勤務地・通学地の二項目、そして世帯に関する事項として(1)世帯の種類、(2)人数、(3)持家・借家の別、(4)部屋数、(5)床面積、(6)一戸建・共同住宅の別の6項目が調べられました。ただし10年ごとに行われる本調査では、この他に学歴、通勤・通学時間、家計についてなどさらに5項目が追加されます(同5条)。
さておたずねの件ですが、現実に国勢調査にたずさわる調査員は、総務庁長官が任命し、総務庁統計局の発行する国勢調査員証を携帯します(同7・8条)。現実には地域の自治会役員や民生委員が任命されることが多いようです。調査員は調査票を回収したあと、記入漏れがないか等のチェックを行ったあと、各市区町村役場へ提出します。もちろん、調査結果については秘密の保持が厳重に義務づけられており(統計法14〜15条の4)、調査票も3年間保存されたあと溶解されることになります。
また、調査員によるチェックをお望みでない方は、のりなどで封をして提出すれば(封入提出)、調査員はそのまま役場に回送し、そこで開封されることになりますのでご安心下さい。あるいは直接自分で役場に持参することも可能です。
ちなみに1995年の調査の結果は、その年の12月末に速報が、翌年2月末に人口・世帯に関する基本的な結果が公表されました。
国勢調査は私たちの生活をより良くするための資料となるもので、回答は義務づけられています(法5条)。罰則としては、調査に答えなかったり虚偽の回答をしたりなど悪質なものに対して、6ヶ月以下の懲役もしくは禁錮または10万円以下の罰金との定めがあります(法19条)。ただ、この罰則はここ20年ほどは実際には適用されていないようです。