
法のくすり箱
Q、親しい友人に頼まれて車を1週間ばかり貸したところ、通行人にけがをさせてしまいました。被害者から友人のみならず私にまで損害を賠償せよとの申し出がありました。けがをさせた友人はともかく、私にも責任があるのでしょうか?
A、自動車損害賠償保障法は、自動車を自己のために動かしている者(運行供用者)が、その自動車によって他人にけがをさせたり、死亡させたりした場合に賠償責任を負わせています(3条)。
この運行供用者とは、通常は車の所有者のことをいいますが、所有者が自ら運転している場合にかぎらず、他人に車を貸した場合まで運行供用者とされる場合があります。そのほか、たとえば車を預かっている修理業者、他から借用して車を運転している者も運行供用者にあたり、さらには、従業員に車を無断運転された事業主や名義だけ車の所有者となっているにとどまる者さえも運行供用者に該当するものとされています(判例)。すなわち、運行供用者にあたるかどうかは、「運行による利益」・「運行の支配」という2つの基準により、具体的・個別的に判断されます。
あなたの場合は、自分の車を他人に貸したわけですが、有償の場合にはこの基準からいっても運行供用者といえるでしょう。レンタカー会社が運行供用者とされているのと同じことです。
しかし、あなたが無償で貸したのであれば、あなたに経済的な利益はないわけで、また、運行支配の点でも直接的な支配とはいえないのですが、現在の判例実務の考え方は貸主の運行者責任をひろく肯定する傾向にあります。無償で貸した場合といえども、貸主と借主とが友人としての人的関係を有し、貸借期間も短ければ、貸主の運行利益はなお継続しているものとされていますから、本件の場合あなたは友人とともに責任を免れないものと思われます。被害者と話し合うなどして円満な解決を図るとともに、親友といえども安易に自分の車を貸さないように今後注意することですね。

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