
法のくすり箱
Q、私は一昨年やっと念願のマイホームを手に入れましたが、最近になって居間や押入れの壁にかなりのひび割れができ雨漏りが生じています。まだ補修や損害賠償の請求ができるのではないかと思いますが、いつまでに誰にすればよいのかお教え下さい。
A、あなたが入手されたマイホームは、注文住宅ですか、それとも建売住宅や分譲マンションですか。どちらであるかによって少し回答が異なります。
注文住宅だったとしましょう。あなたは建物の引渡しを受けて後も木造建築ならば5年間、鉄筋コンクリートなどの堅固な建築の場合には10年間、建物の欠陥(「瑕疵」という)に対して建築を請け負った業者へ補修や損害賠償の責任を問うことができます(民法638条1項)。もっともこの場合には、次の2つのことに留意して下さい。まず、@建築業者の責任期間は原則として上記のとおりですが、ひび割れ・雨漏りなどの欠陥が生じたことがわかったときは1年以内に建築業者に責任をとるように申し出なければならないのがきまりです(民法638条2項)。次に、A右の責任期間は建築契約書をかわしたときに約款(たとえば建築業協会などの四会連合協定)で短縮されていることが多いので注意しなければなりません(この四会連合協定では、責任期間を木造建築は引渡後1年、コンクリート造等の場合は引渡後2年を原則とし、業者に故意や重大な過失があった場合にかぎり、木造5年、堅固な建築10年としている)。あなたのマイホームが木造の場合には、一昨年の建築ということですから、建築契約書の約款が責任期間を1年以内としていなければよいのですが……もっとも、業者の故意や重大な過失による手抜きなどの場合には、この四会連合協定上も責任を問えます(なお、この責任期間を当事者で5年なら5年と特約しておくとこれが優先するので、これから建築に際して契約書を交わす人は心得ごとです)。
次にあなたのマイホームが建売住宅や分譲マンションである場合にはどうか。買うときに通常の点検をしても発見できなかった欠陥(「隠れた瑕疵」といい、設例のケースはこれに該当する)があった場合には、売主に対してその欠陥の程度に応じて契約の解除や損害賠償を請求することができます(民法570・566条)。欠陥箇所の補修を求めるというかたちで売主に請求されても構いません。しかしこの請求は、あなたが「事実を知ったときから1年以内」にしなければならないのがきまりです(民法566条3項)。もっとも、引渡しを受けてから10年もたって責任を追求されるのは困るという売主の立場から、マンション分譲契約などではしばしば引渡しから2年過ぎると売主は責任を負わないという特約がなされていることがあるのでご注意下さい。このような特約がないときでも、欠陥に気付く(事実を知る)時期が引渡しから相当期間(3年程度)をこえるとトラブルが生じやすいので、欠陥の発見や発覚は早いにこしたことはありません。
なお、建売住宅・分譲マンションの場合には注文住宅の場合と異なり、引渡しのときに明確であった欠陥については売主に責任追求ができないので、引渡しを受ける際には十分よく点検することが肝要です。

ホームページへカエル
「損害賠償Q&A」目次にもどる
次のページ(法のくすり箱「上階対策は万全か?(マンションの水漏れ)」)へ進む