法のくすり箱
Q、私はある会社で顧客からの苦情相談の仕事をしていますが、先日相談にきた顧客から殴打されるという事故が発生しました。この事故による傷害は業務上の災害となりますか?
A、職場で他人から暴行された場合に、それが業務の遂行にともなう怨恨(うらみ)等によるものか、私的怨恨によるものかがはっきりしないことが多いのですが、たとえ業務の遂行中であっても私的な怨恨による加害行為によって負傷した場合は業務「外」の災害となり、業務の遂行中でなくてもそれが業務遂行にともなう怨恨によることが証明されれば業務「上」の災害とされます。業務上の扱いが認められる事故に対しては労災保険(労働者災害補償保険法)の適用が認められ、治療期間・補償給付等において労働基準法上の災害補償(一時金が原則、治療も3年を経過して治癒しないときは打切補償でピリオド)にくらべ、労働者に手厚い保護が与えられています。
あなたの場合、(1)加害行為が明らかに業務と関連しているか(事故発生のいきさつはどうか、業務が他人の反発等を買いやすいものかどうかなど)、(2)業務上の事実と加害行為との時間的・場所的な関連性はどうか等が総合的に検討されることになります。
警察官や税務職員あるいは労働争議中の人事当局者のような、正常な活動がうらみを買う可能性が高い職務にある者については、それによって生じた災害は業務上と認定される場合が多いといえます。あなたのような苦情窓口の業務の場合にも、往々にしてトラブルが発生しやすい職場といえましょう。あなたが相手方を不必要に挑発したり、あるいは業務とは無関係の私怨を受けているなど、特別な事情がないならば、労災保険の申請をしてみられるのがよいでしょう。
いずれにせよ、あなたの会社の苦情相談業務の実情、第三者にうらみを買う危険性、殴打されるに至った経緯等をよく検討して判断すべきこととなります。
なお、加害者も同時に負傷していて、いわば「けんか」とみるべき場合には、業務上の事実も私的なうらみに変わっているとして普通は業務上としては認められません。

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