
法のくすり箱
Q、私は、10年位前に郵便局の養老保険に加入しました。契約内容は、契約者・被保険者・満期時受取人が私自身で、死亡時受取人は長男です。ところが、1年位前から長男夫婦との折り合いが悪くなり長男夫婦と別居をするようになりました。そして最近、生活費の足しにしようと思い養老保険を解約するために郵便局に行ったところ、「契約者の名義が変更されているのであなたは解除できない」と郵便局員から言われました。保険契約書は別居の際長男夫婦が隠してしまい、話を聞きに行っても知らないの一点張りです。私にひと言の断りもなくそんな勝手なことができるのでしょうか?
A、確かにあなたが保険契約者であれば、いつでも将釆に向かって保険契約を解除することができます。そして還付金等が郵便局から支払われます。
ところがあなたの場合、長男夫婦に契約者名義を勝手に変更されてしまったものと思われます。そうであればあなたとしてはこうした契約者名義の変更を受け入れることはできず、あなた名義の養老保険がずっと有効に続いていたものとして、予定どおり、郵便局に対して保険契約の解除と還付金等の請求をすることができるのでなければなりません。
法律的にいうと、保険契約者名義の変更は契約上の地位の譲渡に当たります。地位の譲渡は、譲渡人(旧名義人)と譲渡人(新名義人)との間の譲渡契約ですから、当然、少なくとも、あなた(譲渡人)の同意を必要とします。通常、後日の紛争を防止するために、 譲渡人の署名押印をした同意書が作成されます。そしてそれを郵便局に提出して名義変更の手続きがなされます。したがって、あなたがこのような同意書に署名押印をしたことがなく、しかも長男夫婦に変更を頼んだこともないのであれば、おたずねの保険契約者の名義変更は無効ですから、あなたは保険契約者として郵便局に対して保険契約を解除することができます。
このように、法律的には簡単に、あなたが現在も契約者であるといえるのですが、現実にはなかなか難しい問題があります。というのは、たとえ無効なものであっても、ひとたび契約者名義の変更手続がなされてしまっていると、通常郵便局では保険契約調査票をあなたに交付してくれません。そのため、一体現在誰が契約者であるかもわからないし、いつ名義が変更されたかを知ることすら困難なのです。元の契約者であることが明らかな場合であっても郵便局が保険契約調査票の交付を拒否する実務取扱いの法的根拠については多々疑義のあるところであり、まずは郵便局に強く資料の開示を請求してみて下さい。
次にとりあえず、一度弁護士と相談してみることをお勧めします。郵便局も弁護士が弁護士会を通じて行う照会には文書で回答します。資料を集めた上で郵便局に是正を申入れ、なお必要があれば郵便局あるいは長男夫婦を相手に訴えや調停をおこすことになるでしょう。

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