
法のくすり箱
Q、先日私の車はA所有の車に追突されて大破しました。ところがそのAの車は盗難車だったのです。車を盗んで運転していた犯人は、追突させたまま逃亡して所在がわかりません。Aに対して私の車の破損について損害賠償を求めることができるのでしょうか?
A、加害車の所有者であるAに対しては損害賠償を求めることができる場合とできない場合とがあり、事情によりけりです。Aはその「自動車の運行について指示・制御をなしうべき地位」にあると解され(昭和45・7・16最高裁判決)、盗難時における車の管理状況いかんにより、Aは車の保有者としての運行供用者責任(自賠法3条)を負うものとされるのです。車が盗まれた場所、鍵をかけていたか、盗まれてからの時間や場所のへだたりなどが問題です。
これまでの裁判例にあらわれた考え方を参考までに例示すると、@車が公道上に放置されていたとき、Aドアを施錠せずエンジンキーをつけたまま車庫外に置かれていたとき、B車の盗難後あまり時間がたっていないとき、C事故現場が車の盗難場所に近接しているとき、D車両の盗難届を出さずに放置してあったとき、E運転者が車から長時間離れていて盗まれたとき、などにAの責任が認められることとなる傾向があります。
そして逆にAの責任が否定される要素としては、@車が車庫などにちゃんと保管されていたこと、Aドアに施錠しエンジンキーを抜いていたこと、B直ちに盗難届を出していること、C盗難後の時間が経過していること、D泥棒とはまったくのあかの他人であること、などです。
そして実際にはこれらの要素の組合せの中で、Aの賠償義務の有無が決まることになります。たとえば、Aが道路上でキーをつけたまま車を放置して盗まれたのであれば、一応Aは責任を負うべきものと思われますが、車が盗まれて2年も3年もたっていれば責任を追及するのは酷との考え方も出てくるといったあんばいです。このような点をわきまえながら、あなたとしてはAに対しては原則として責任を追及される方針で臨まれるのが実際的であると考えます。

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