法のくすり箱


、先日東京で就職している息子のアパートを訪ねたところ、サラ金やクレジット会社からの督促状が何通もきていました。息子に問いただしたところ、総額約300万円程度の借金の支払いが滞り、会社へも電話がかかってくる状態とのことでした。息子の反省を信じて今回ばかりは親の私が代わって弁済することにしたく思いますが、元本はともかく利息や損害金は利息制限法の範囲にとどめたく思います。これらの交渉はどうすればよいでしょうか。また交渉している間にも息子の会社にたびたび電話がかかることはないでしょうか?

、最近サラ金などから多額の借金をして返済が困難になると安易に破産申立ての道を選ぶケースがふえています(破産者となった場合の法的地位等については、法のくすり箱破産者になると……制限される資格と権利」参照)。ここであなたが、高価な出捐を伴いつつも借りたものは返すという道理を改めて息子さんに示されることは、息子さんの自覚と反省を促す上で親としての一つの見識ということになりましょう。しかし本来は、いくら父親でも息子の借金を肩替りする義務はありません。
 さて、まず第一に、息子さんに借入先であるサラ金等の会社名・住所・電話番号・借入額などをできるだけくわしくメモ書きさせることです。次にこのメモ書きをもって、@法律事務所を訪ねて弁護士に債務整理を依頼するか、または、A裁判所(簡易裁判所ですが、とにかく近くの裁判所を訪ねて下さい)に調停の申立て(裁判所に行けばそのやり方を指導してくれます)をして下さい。債務処理に関する権限を弁護士に委任した旨、または調停その他の裁判手続をとった旨の通知を受けた後は、サラ金や割賦販売業者が正当な理由なしに直接本人に対して支払請求をすることは禁じられています(取立て行為の規制に関する通達、貸金業者に対し昭和58年、割賦販売業者に対し昭和59年)。
 この通達による取立行為の規制としては上のほかに、本人の私生活や業務の平穏を害する言動(たとえば、不適当な時間帯に反復または継続して訪問・電話・電報などをすること、個人のプライバシーをあからさまにすること、勤務先の会社を訪れて本人を困惑させること)を禁止しています。このほか大声をあげたり、乱暴な言葉を用いたり、多人数で押しかけたり、おどかすような書面や電報を送付することも禁止されています。これらの禁止違反に対しては、債務整理を弁護士に委任しているときには当該弁護士に申し出て対応を求めて下さい。弁護士を頼まず直接本人において調停を申し立てている場合には自治体の消費者担当部門と警察(程度により刑法に加え暴力行為等の処罰に関する法律に違反)とに連絡することです。
 ちなみに、利息制限法によれば利息・損害金等について制限利率が定められ、元本が10万円未満のときは年20%、10万円以上100万円未満のときは年18%、100万円以上のときは年15%となっています。しかしあなたの方からの弁済条件によっては(たとえば1回で相当額を提供するなど)業者の側から元利を含めてかなりの減免を引出すことが可能です。債務整理はしばしば煩雑な業務ですが、できれば弁護士に引き受けてもらうことで、有利な減免と不安の解消をはかることをおすすめします。

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