法のくすり箱
Q、私はあるメーカーの臨時従業員として3ヶ月の雇用契約で仕事をしてきました。この3ヶ月契約は何回も更新され、すでに6年近くになります。ところがこのたび突然上司から、業界の不況を理由に、契約期間が今月いっぱいで満了するので来月からは出社しなくてよいと言われたのです。臨時従業員の地位は期間がくれば自動的にクビになるような弱いものなのかと納得できない気持ちです。
A、いわゆるバブル崩壊に伴う不況が深刻化するにともない、今、さまざまな業界で臨時社員(パート・嘱託社員を含む)の雇用がおびやかされています。
まず、仕事の性質からいって一時的・臨時的であることがはっきりしている労働者の場合(たとえば、(a)日々雇い入れられる者、(b)季節的業務に4ヶ月以内で従事する者など)は、ふつうは契約期間がくれば雇用契約も終わりますが、この(a)の者でも1ヶ月をこえて引き続き使用されるとか、この(b)の者でも所定の期間をこえて引き続き使用されたときには、「期間の定めのない契約」になったとみられ、期間がきたからすぐにやめてくれとは言えないことになっています。そして次に、仕事が一時的・臨時的でもない場合に、3ヶ月、半年などと短い期間をきめて何回も更新をくりかえしているようなときには、「期間の定めのない契約」になったとみられます。
そして、すべからくこの「期間の定めのない契約」においては、使用者は、解雇予告(30日前の通知)または予告手当の支給(予告期間が30日に満たない分の平均賃金の支払。たとえば、即刻クビなら30日分、20日後にクビなら残る10日分など)を義務づけられ、かつ、労働者の病床・産休中の解雇制限等を課されます(労基法14・19・20条)。そしてさらに、より基本的に、使用者の解雇に合理的理由があったかどうか(解雇権濫用の有無)の観点から、正当な理由が認められることが必要とされています(たとえば、パートタイマーであるからといって何の理由もなく使用者の一方的意思表示によって雇用関係を終了させたのを無効とした春風堂パートタイマー解雇事件、昭和42・12・19東京地裁判決)。
あなたの場合には、期間がきても会社が契約の更新拒否(いわゆる雇止め)を行わず、あなたもこれを期待し信頼するといった相互関係のもとに労働関係が継続されてきたといってよいでしょう。このようなときには、使用者側に解雇をやむをえないと認められる特段の事情があるのでなければ、期間満了を理由とする雇止めは許されないことになっています(昭和49・7・22最高裁判決)。
そこであなたの場合、不況時の経営合理化を理由にいきなり整理解雇することが、やむをえない特段の事情として認められるかどうかがポイントです。(1)あなたの雇止めをしないと経営がきわめて困難になるといえるか、(2)使用者側が前もって、配転・出向・新規採用の取止め・希望退職募集など解雇回避の努力をしているか、(3)解雇にあたって突然の言渡しではなく説明その他の手続きが十分とられたか、(4)正規職員よりも先に臨時職員から解雇されるのはやむをえないとしても、あなた以外の臨時職員もいる場合にその人選が合理的であるといえるか、このような点が整理解雇を有効とするかどうかの判断基準となります。あなたが解雇を争いたい場合、個人でもむろん可能ですが、なかなか荷が重いかもしれません。労働組合に相談し組合を通じて使用者と交渉されてはいかがでしょう。
なお、解雇にはこのケースのような整理解雇のほかに、懲戒解雇・普通解雇といった労働者側の理由にウェイトのかかる解雇があり、その場合の解雇の有効性・判断基準が整理解雇のそれとは異なることはもちろんです。

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