
法のくすり箱
Q、私は月収手取り25万円のサラリーマンです。軽い気持ちでレジャー資金としてサラ金に手を出したのが始まりで、今ではサラ金10数社から1000万円近い借金があります。
このままでは、とても返済できそうもありません。自己破産の申立てをしようと思うのですが、破産者になると戸籍にも記載されるとか、子供たちの将来にも影響を与え、一生まともな生活がおくれなくなるのではないかと心配しています。
A、破産すると一生まともな生活はおくれなくなると思っている人が多いようですが、 破産による不利益は一般の人が考えているほど大きなものではありません。
破産者となると、次の資格者にはなれません。
○後見人、○後見監督人、○保佐人、○保佐監督人、○補助人、○補助監督人、[後見・保佐・補助についてはそよ風103号参照]、○保証人、○遺言執行者、○信託の受託者、○株式会社の取締役・監査役、○証券会社の外務員、○旅行業者、○商品取引所会員、○宅地建物取引業者、○中央卸売市場の卸売業者、○建設業法に定める建設業者、○合名会社及び合資会社の社員、○弁護士、○公認会計士、○税理士、○公証人、○司法書士、○弁理士、○検察審査員、○商工会議所会員、○人事院の人事官、○公正取引委員会の委員、○国家公安委員、○都道府県公安委員など
しかし、破産しても選挙権・被選挙権のような、いわゆる公民権は失われませんし、前述したような特別な職は別として、一般的にはどんな職業にもつくことができます。破産者になっても会社を退職しなければならないということはありません。また、会社は破産宣告を受けたことを理由に破産者を懲戒解雇することはできません。破産者に対する資格の制限は、以上のように普通のサラリーマンにとってはほとんど縁のないものばかりです。
とはいっても、もちろん、破産者には財産の管理処分権はありません(破産法7条、財産の管理処分は破産管財人に属することになる)。また、転居したり、長期の旅行をするには裁判所の許可が必要(147条)であったり、破産者に対する郵便物は全部破産管財人に配達されてしまう(150条)などのいろいろな制限があります。
なお、これらの資格・権利の制限は免責(破産終了後もなお残っている破産者の債務を免れさせる手続)決定があると復権することになっています。
ただし、債務者にこれといった財産がなくて破産手続きの費用すら出ない場合には、破産管財人は選任しないで、破産手続きを終結してしまいます(同時破産廃止)。この場合には公私の資格は喪失しますが、前述した財産の管理処分権は喪失せず、すぐに免責手続きに入ることとなります。
破産者には以上のような諸拘束・諸制限がありますが、破産すると戸籍に傷がつくとか、親兄弟・子供など家族に影響があるというようなことはもちろんありません。
以上のようにみてみると、あなたが破産宣告を受けても日常生活上は何ら不利益はないようにも思われますが、破産者は当然、経済的に信用がありませんから、破産者や家族がローンで買い物をすることが困難になったりすることも忘れないでください。
破産は最後の切札であり、一生に何度も利用できる制度ではありません。あなたが、破産申立てをされるのであれば、破産は従来の借金生活と訣別するための手続きであることを肝に命じ、再び安易な借金生活をすることが決してないよう心掛けてください。

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