
法のくすり箱
Q、わが家は1人娘なので婿に養子に入ってもらい、家族4人なかよく家業を営んできました。ところが、婿が浮気をしていることがわかり、娘はどうしても離婚するといいます。離婚ということになれば、当然、養子縁組も解消することになると思いますが、この場合、慰謝料や財産分与はどうなるのでしょうか?
A、婚姻の解消は離婚というのに対して、養子縁組を解消することは離縁といいます。戦前の民法では、婿養子の離婚は、即親子の離縁につながっていましたが、現在では、離婚と離縁はまったく別個のものとして扱われます。というのも、離婚は夫婦関係の問題であるのに対して、離縁はそれとは別に、あなた方両親と婿との親子関係の問題だからです。
さて、まず娘さんの離婚についてですが、「配偶者に不貞な行為があったとき」は離婚のための裁判を提起できる原因として認められています(民法770条)。ですから、話合いで協議離婚をするにしろ、家庭裁判所で調停や審判による離婚をしたり、あるいは裁判による離婚となるにせよ、立派な離婚原因であり、当然、慰謝料を有責者である夫に対して請求することもできます。
これに対して離縁の方は、裁判によって離縁ができる原因として認められているのは次の3つの場合です(民法814条)。
@ 他の一方から悪意で遺棄されたとき
A 他の一方の生死が3年以上明らかでないとき
B その他縁組を継続し難い重大な事由があるとき
婿が家業を熱心に手伝い、 しかも親孝行もそれなりにしてくれているようなら、親子の縁を切らなければならないほどの「継続し難い重大な事由」にはなっていないと思われます。裁判による離縁の原因として認められるのは、親子関係が完全に破綻し回復の見込みもなく、しかもその原因をつくった方(有責者)ではない方からの訴えの場合なのです。一方的に暴力をふるうとか、まったく働かなく家の金を持ち出すとか、親子関係を破壊する具体的な事実が必要です。ただ単に娘と離婚したからというだけの 理由で離縁するわけにいかないのは前述のとおりです。
したがってあなたは養子である娘婿とよく話合って、円満に解決すべきだと思われます(協議離縁、811条)。その際一定の金員を支払う覚悟も必要です。離縁には、離婚の場合のように財産分与を請求する権利(768条)は明文化されていません。とはいっても、娘婿も家業を手伝い財産形成に貢献したわけですし、実務上も離縁に際して和解金・慰謝料・損害賠償とさまざまな名目で支払われているのが実情です。とにかくよく話合って、どうしても解決がつかないようなら、家庭裁判所に調停を申立てて調停委員の助言の下に離縁の合意をとりつけるよう努力して下さい。
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