法のくすり箱
Q、私は5年前現在の夫と結婚し、2才の子供が1人あります。夫は大の賭事好きで方々から借金をして生活費も入れてくれません。少しでも文句を言おうものなら殴る蹴るの乱暴を働きます。2才の子供を連れて別れたいと考え、夫に離婚を申し入れているのですがききいれてくれません。どうすればいいのでしょうか?
A、あなたの場合、夫と話し合って合意のうえの離婚(協議離婚)ができればよいのですが、夫が離婚に応じてくれないときには法的手続によらざるを得ないでしょう。法的手続といえば、多くの人は通常裁判(離婚訴訟)のことを考えますが、わが国では、調停前置主義といって離婚の訴えを起す前に原則として家庭裁判所へ離婚調停を申立てることが義務づけられています(家事審判法18条)。
あなたの場合もひとまず、家庭裁判所に調停を申立てることになり、この調停で離婚が成立すれば別れることができます(調停離婚)。そして、離婚訴訟は、この離婚調停が不調のときに提起することになり、これに勝訴すれば別れることができます(判決離婚)。
また、上の離婚調停が成立しない場合には、例外的に、離婚の審判を行うこともありますが(審判離婚、家事審判法24条)これは、相手方に離婚合意の感触があっても出頭が望めない場合や、外国人で調停制度になじまない場合などに限られています。審判による離婚は手続の上では存在していますが、実際にはほとんど例がなく、多くは調停が不成立なら、訴訟の提起となります。
ところで離婚訴訟において離婚原因が法定されており、それは、(1)不貞行為、(2)悪意の遺棄、(3)3年以上の生死不明、(4)不治の精神病、(5)その他婚姻を継続し難い重大な事由(暴行・浪費・夫婦関係の完全な破綻など)とされています(民法770条)。またこれらの離婚原因は、調停や審判において離婚の是非を判断する事由として重視されています。
ちなみに離婚訴訟の場合、判例は、上のような離婚原因の発生に責任がある者(有責配偶者)からの離婚の請求を 原則として認めていません。ただ例外として、夫婦関係がすでに破綻して、もはや回復することが不可能であると認められる場合には、有責配偶者からの離婚請求が認められることがあります。
あなたの夫の浪費や暴行が前記(5)の婚姻を継続し難いほどの重大な事由に該当する程度のものであるかどうかが、あなた方夫婦の離婚調停や訴訟を大きく左右することになります(昭和26年名古屋地裁、昭和33年最高裁)。また、離婚に伴って慰謝料や扶養料、養育費等の問題が生じてきますが、通常、これらの問題は、離婚についての協議・調停・訴訟の際に、離婚とともに解決されることになります。
(「離婚原因」については特集参照)

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