法のくすり箱
Q、夫の女性関係でケンカが絶えず3ヶ月前から別居していました。ところが先日、戸籍謄本が必要になり取ろうとしたところ、いつのまにか私は夫と離婚したことになっているのを知りました。離婚届に判をついた覚えもなく、離婚するつもりは全然ありません。こんな一方的な離婚でも取消すことはできないのでしょうか?
A、夫婦の合意による離婚を「協議離婚」といいます(民法763条)。これは、夫婦どちらもが離婚の意思をもって離婚届に署名押印し、市町村役場に届出ることによって成立します(未成年の子供がいる場合は親権者をどちらにするかを決めた届出も必要)。あくまでも夫婦の合意によるので、どちらか一方だけが離婚するつもりでも協議離婚は成立しません。
ところが、役場では離婚届が提出されたときに「本当にお互いに別れる意思があるのか」を調べるわけではないので、届出用紙に所定の事項が記入されてさえいれば自動的に受理してしまいます。このため、一方が勝手に離婚届を作成して届出た場合や、本当は別れるつもりはないのに感情的になって判を押してしまった場合でも離婚届は受理されてしまうのです。しかし、これは夫婦の合意によるものではないので離婚そのものは無効です(民法742条1号)。
とはいっても、一度離婚届 が受理されてしまうと、戸籍簿はそれに伴って書き換えられてしまいますから、事情を話してすぐに元の状態に書き直してもらうというわけには参りません。まずは、家庭裁判所に協議離婚無効の調停を申立てなければなりません(調停前置主義、家事審判法17条・18条)。家庭裁判所が必要な事項を調査した上で離婚の無効について合意ができ、無効が確定すれば、その後1ヶ月以内に戸籍訂正手続きをとることができます。残念ながら調停で話合いがつかなかった場合には、地方裁判所に離婚無効の確認を求める訴えを起こさなければなりません。審理の結果、離婚は無効であるという判決になれば、戸籍を訂正することができます。
あなたの場合も、知らない間にご主人が勝手に離婚届を出してしまったということなので、とにかく家庭裁判所へ調停を申立てなければなりません。まずは家庭裁判所の窓口や法律事務所などに相談するとよいでしょう。
また、今回の離婚は無事に無効が確認されても、今後も同様にご主人が勝手に離婚届を出してしまうような心配があるようでしたら、「離婚届の不受理申出書」をあなたの住所地か本籍地の市町村役場に提出すればよいでしょう。これを受付けてから6ヶ月間は離婚届が出されても受理されません。6ヶ月を過ぎると効力がなくなりますが再度同じ手続きをとることで延長できます。
なお、だまされたり脅されたりして判を押してしまった場合には、離婚は一応成立しますが、離婚取消の手続きをとることができます。具体的には上に述べた無効手続きと同様の過程をへることになります(民法747条・764条)。

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