法のくすり箱
Q、私の本籍は4丁目9番地と非常に縁起の悪い数で、戸籍謄本を取り寄せるたびにいやでいやでたまりません。本籍を簡単に移すことはできるのでしょうか?
A、明治5年につくられたいわゆる壬申戸籍は、本籍と住所地を同一とし、住民登録を兼ねたものとして始められました。しかし、明治31年旧民法の制定とともに「家」制度がつくられ、戸籍は「家」に属する者の身分登録を主な目的とするものとなり、当然住所地や現実の生活単位とは一致しないものとなっていきました(「家」に入ると入籍、「家」を去ると除籍となった)。
現在の戸籍法も、新しい憲法と新しい民法のもとで新たにつくられたものとはいえ、旧来の戸籍を引き継いでいるため、本籍は現在の住所地と何ら関係ありません(住所については住民票で管理する)。それどころか、本籍はかつての住所地や特別の縁故の地である必要もまったくなく、日本国内であればどこでも自由に設定することができます。今や本籍は、その人の戸籍が保管されている市町村を明らかにし、筆頭者の氏名とともにその戸籍を特定する(9条)だけのものとなっています。
そこでお訊ねの本籍の変更(転籍)ですが、いつでも、何人の同意も許可も要せず、届出により自由に変更できます。転籍届には転籍の理由を書く必要もなく、あなたのような「縁起が悪い」ということでも、理由がなくとも構いません。
届出は、戸籍の筆頭者とその配偶者が共同で行い、現在の本籍地の役場あるいは新しい本籍地の役場または住所地の役場に提出します(108・109条)。なお、現在の本籍と異なる市区町村に転籍する場合には今の戸籍謄本を付ける必要があります。
現在、本籍の表示は地番号もしくは住居表示の街区符号によることも認められていますので(昭和51年法務省令48号)、もしあなたの本籍が古い地番号表示なら、街区符号に改める転籍届を出されるのがもっとも簡便だと思います。あるいは本籍をどこかに移動されるにしても同一市区町村内の転籍であれば、本籍欄の古い表示を線で消し、その横に新しい本籍を書き込むだけの手続きですみますので簡単です。
一方、異なる市区町村へ本籍を移されると、新しい市区町村で新たな戸籍に書きかえられます。その際、古い戸籍に載っていた除籍者(たとえば結婚して独立した子や離婚した配偶者など。ただし筆頭者は除く)やすでに効力を失った身分事項(たとえば離婚した旨の記載や離縁した縁組の記載など)、そのほか父が子に対して行った認知の事実などは省かれて記載されます。従って転籍に伴いこれらの記載が省略されるため、相続の際に親族関係を明らかにする必要があるなど(相続人を特定するために、結婚して独立した子や認知した子等を調べる)、特別な場合には、元の除籍謄本を取り寄せる必要が生じますのでご注意下さい。

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