
法のくすり箱
Q、私は、駅に近い建物の一室を借りて20年も飲食店を経営しています。このたび家主から、建物が老朽化したので建て替えたいと申入れを受けました。私は立ち退かなければならないのでしょうか?
A、おそらくあなたは、現在のところ、家賃を滞納したり、無断で大改造をするといった不都合(債務不履行)はなさっておられないことと思われます。ですから家主が一方的に解除権を行使して契約を終了させることはできません。
ただし、建物が朽廃し滅失すれば賃貸借は終了します。あなたの場合、建物が老朽化したということですが、ふつう老朽化を滅失と同視することはできません。ただ、その老朽化の程度が激しくて居住に危険だというようなとき(消防署の勧告も一つの資料になります)には、家主の解約申入れには正当事由があることになり、裁判をすれば解約を認める判決が出るかもしれません。
あなたとしては、老朽化の程度を見極めながら、家主と全面的に争うか、それとも、立退料の額を交渉したり、建て替え後も居住を保障してもらう等についての条件を交渉するか、柔軟に対応するのが得策と思われます。
家主が家賃を受け取ってくれない場合は、話合いがつくまで、賃料を法務局に供託しましょう。そして双方だけでは話合いが難行するようでしたら、近くの簡易裁判所に調停を申し立ててみられることです。裁判所では、専門家である調停委員が間に入って、多くの事例をふまえた上で妥当な解決がはかられます。
なお、家主の申入れは、このケースでは告知(解約申入れ)と考えられます。解約すべき日の6ヶ月前になすことが義務づけられ、しかも正当事由がなければ解約できないことになっています(借地借家法27・28条、旧借家法1条の2・3条)。正当事由(この場合は建物の朽廃)が認められないかぎりは、家主と争ってもあなたに分があると思われます。

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