法のくすり箱
Q、私は今春大学を卒業し、ある企業に採用されたのですが、「3ヶ月の試用期間」終了直前に、本採用はしないという通知を受けました。試用期間中の解雇に対して文句はいえないのでしょうか?
A、多くの企業では本採用をする前に、試用期間(ふつうは3ヶ月ぐらい)をもうけ、その期間中に、労働者の能力・人物などを評価し、その結果によって本採用の可否を決めることにしています。この試用期間をもうけるかどうかは企業の自由であって、法律上規定されているわけではありませんが、わが国では終身雇用制度が広くとられており、いったん本採用となった者はよほどの事由がないかぎり定年までその企業にとどまる慣習から、とくにこの試用期間が重視されています。
このため試用期間中は、本採用された以後とくらべて、使用者に若干広い解雇権が留保され、より自由に労働者を解雇できると考えられます。だからといって、一般の労働者なら解雇できないような不合理な理由(たとえば、国籍・人種・社会的身分・信条など)でも解雇できるというわけではありません。
すなわち、試用期間中の解雇の基準は、あくまで、労働者として適格であるかどうかによるべきものです。事務能力・作業能率等のほか、礼儀や協調性も程度いかんでは人物評価の対象となるでしょう。あなたの場合、考えてみて何か思い当たるふしがありませんか。もちろん、不合理な恣意的な理由での解雇は許されません。それにもかかわらず、通常、そのような解雇を争うための訴訟までは困難であるところから、実際上は、試用期間中は使用者が大幅な裁量権を行使する結果となっているといってよいでしょう。
ちなみに、試用期間中の労働者と使用者の関係も労働契約には変わりがないので、その解雇手続きについては、労働基準法が適用されるのは当然です。すなわち、14日を超えて引き続き使用されていれば、天災事変その他やむをえない事由か、労働者の責に帰すべき事由のないかぎり、解雇にあたって30日前にその予告をするか、あるいはそれに相当する予告手当(たとえば、即刻クビなら30日分の平均賃金、10日後に解雇なら残る20日分の平均賃金…)が支払われることとなります(労働基準法20・21条)。

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