
法のくすり箱
Q、マンションを購入して住んでいますが、上の階のA氏宅から水漏れがあり、家具や敷物に被害が生じて困っています。早急に被害を防止したく、よい解決方法をお教え下さい。
A、マンションは階上と階下の部屋がコンクリートの壁で区切られているため、階上の給水・排水管などの設備に事故が生じると、その調査・修繕をするにはどうしても相手方の協力が必要となります。
当然のことながら、まずはA氏に被害の状況を確認してもらったうえで、補修工事の方法や費用負担について協議することです。日頃からA氏と親しい付き合いがあったりして快く協力してもらえればよいのですが、こじれた場合には、相手方は、被害現場の確認はもちろんのこと、補修工事や漏水の責任についての話合いも一切拒否するばかりか、あなたの方が漏水原因の点検のために住居に入ることすら拒否することも考えられます。
そのようなとき、あなたとしては、とりあえず、責任や費用の話は後まわしにして、自分の方で工事人を雇ってでも相手の住居に立入り、修理工事を最優先する必要があるものと思われます。
何とかねばって、工事のために立入ることの承諾だけでもとりつけておき、早急に自らの費用で工事をすませることが上策です。その際には、後日、工事の費用についてA氏と協議する際の証拠として、領収証とか、工事人などに頼んで漏水の原因などを記載した書面を作っておくとよいでしょう(なお、後日において、あなたとA氏との間で、工事や損害の賠償について話合いがつかねば裁判により解決を図るほかありません)。
一般に、他人の住居に立ち入るには、居住者の承諾が必要ですが、マンションの場合は、一戸建ての建物とちがって特殊の構造をしているため、「立入りを拒否するのが正当であると認められる特段の事情のない限り、階上の者には、工事関係者が立ち入って漏水原因の点検・調査・修理工事をするのを受忍すべきだ」とするのが判例です(昭和54年大阪地方裁判所)。
そうはいっても、A氏があくまでも立入りを拒否するというのであれば、無理にというわけにはゆかず、裁判によってA氏の承諾に代わる判決を得るとともに、損害賠償を請求することになります。しかし、この方法はあなたにとってもA氏にとってもバカげています。第三者をまじえてでもねばり強く交渉し、A氏を説得することが賢明です。
なお、水漏れの状況いかんによっては、裁判所等による終局的解決を待てない事情を裁判所に申入れて、暫定的に水漏れ防止の措置を命じてもらう方法(仮処分という)もありますが、その要件や手続がやや専門的であり、費用その他の問題もありますので、見込み等についてあらかじめ法律事務所に相談されるのが適当です。
以上は、漏水の箇所が階上のA氏の専用部分において生じている場合、または漏水の原因が上の階のA氏の不注意によって生じた場合など、A氏に補修等の責任がある場合を念頭にお答えしました。
ところで、事故の箇所が建物の共用部分において生じた場合、または事故の箇所を特定することが困難な場合には、補修責任はA氏ではなくマンションの区分所有者全員にあると考えられます(建物の区分所有に関する法律9条)。しかし、いずれにせよ、とりあえずA氏の住居への立入りを求めて事故の箇所を確かめ、修理工事を優先することが肝要です。

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