法のくすり箱
Q、私は結婚して7年、夫との間には2歳8ヶ月の男の子があり、さらに現在妊娠中です。しかし最近夫との生活にいや気がさし、別れ話をしたところ、夫は男の子をおいていくなら別れてもよいといいます。私は ずっと夫と共働きでマンシ ョンも買いました。男の子は実家の両親に預けて共働きをしましたので男の子は両親になついており、私も両親も男の子は引き取りたいのです。またこのような場合、慰謝料はもらえないのでしょうか?別れた後に生まれた子供は私生児なのでしょうか?
A、夫が男の子との同居にこだわる場合には、この別れ話はむつかしいところです。よほどあなたの説得がたくみであったり、夫が思い直したりしたときには、円満な協議離婚ということで調停(家庭裁判所)や裁判(地方裁判所)を経ることなしに子供をつれて別れることができます。その場合には親権者はあなたです(まれに子供と同居する妻は監護者にとどまり夫が親権者という場合もあります)。さて、その場合に夫から慰謝料をとるのは性質上困難です。慰謝料というのは、夫に不法行為(虐待・遺棄・不貞など)があった場合の損害賠償の意味合いが強く、夫にいや気がさしたというのでは理由として薄弱です。
しかし財産分与といって、結婚生活中に2人で蓄積された財産の清算を要求することは可能です。あなたは家事労働や共働きによって財産の形成に夫と協力しているのです。2人の貯えやマンションの価格等を考慮して、その2分の1を請求してよいでしょう。
また、夫は妻と離婚しても子供の養育義務があり、あなたは夫に対して養育費の分担を求めることができます。
これらの財産上の要求は離婚に際して行われるのが普通ですが、あなたの場合はかなり一方的な離婚要求ですので、そもそも夫が離婚に同意するかがポイントです。ひとまず子供をつれて離婚することを優先し、その後で夫と交渉するのが賢明かもしれません。夫との話合いがつかなければ家庭裁判所に申立てて決めてもらうことができます(まず調停の後に審判、家事審判法9・17条)。
なお、離婚後に生まれた子供は、いわゆる嫡出子として戸籍に記載され、私生児(非嫡出子)とはなりません。なぜなら、妻の婚姻中に懐胎した子は夫の子と推定され、婚姻の成立の日から200日後又は婚姻の解消もしくは取消の日から300日以内に生まれた子は、婚姻中に懐胎したものと推定されるからです(民法772条)。
〔監護者〕
監護者というのは、実際に子の世話をする人のことで、父母以外の第3者に頼んでなってもらうこともできる。父母が離婚するとき必ず親権者を決めなければならないが、そのとき別に監護者を定めることがある(協議で、或いは家庭裁判所の審判で定めることができる)。そのときには親権の内容である財産管理権と身上監護権のうちの後者が監護者に移ることになる。

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