
法のくすり箱
Q、私には同居している老妻と長男Aのほかに、養子にやった二男Bがあり、さらに愛人との間にできた子供Cがいます。最近体調が悪く、万一のときには老妻に全部私の財産がいくようにとの遺言状を書いておこうと考えていますが、私の死亡後、妻と子供A・B・Cとの間でもめることはないでしょうか?
A、あなたがなにも遺言をしないで死亡された場合の法定相続分は、あなたの奥さんが遺産の2分の1、子供さんたちで残る2分の1の相続となります。もちろんあなたは、「遺産を全部妻に相続させる」という遺言をすることができますが、そのような遺言によっても、あなたは子供A・B・Cの遺留分(子の場合は法定相続分の2分の1、したがってこのケースなら遺産の4分の1)を害することはできません。たとえあなたが上のような遺言をされても、あなたの死後、遺言に不満の子供は遺留分減殺請求といってその遺留分の範囲内の権利を主張することができますから、もめる可能性は十分にあります。そこで子供の遺留分を配慮した遺言をすることになりますが、その場合には、あなたの財産の4分の3があなたの奥さんに遺贈できる上限です。
なおBの場合、養子にいったからといっても、実の親との親子関係は切れないのです。そしてその相続権は養子にいかなかったAと同様と解されています。
また愛人との間にできたCの場合ですが、あなたがすでにCを認知して法律上の親子関係ができあがっているときにのみ、Cには子としての相続権が与えられます。ただしその相続分は(非嫡出子であるため)AやBの相続分の2分の1とされています。もっとも、非嫡出子を相続で嫡出子と差別することは違憲であるとする判例があらわれており、平等の方向への民法改正が近い将来に予想されているところです。ところで、たとえあなたがCの認知手続きを怠っていたとしても、Cはあなたの死亡後3年間はあなたに対して認知の訴えを起こすことができますから(民法787条)、あなたが死亡の後に相続分や遺留分をめぐる紛争が相続人全員について生ずる可能性があります。Cを無視した遺言は危険です。
A・Bのみならず、C(生前に認知届をすることができないなら、例外的に遺言によって認知することもできます。781条2項)の相続権・遺留分の存在を前提にして、できるだけあなたの妻に実質的に有利な遺言になるように配慮することがあなたの採るべき方法と思われます。できれば、法律事務所か公証人役場に出向いて相談されることをおすすめします。

ホームぺージへカエル
「相続問題Q&A」目次にもどる
次のページ(+αニュースの目「婚外子の相続権」)に進む