A、ここ数年、交通事故の加害者側が、被害者を被告として「賠償責任はない」と裁判を起こすケースが急増しており、問題となっています。症状が固定したりあるいは完治したあと、事故賠償額をめぐって話合いが決裂して訴訟となるのはやむを得ませんが、十分な話合いもなく、あなたのようにまだ治療中にもかかわらず提訴して治療費の負担すらしないというのでは、あまりにも不公正としかいえません。断固、この訴えの不当性を主張し受けて立つとともに、反対にこちらから被害額を算定し、損害賠償請求の反訴を打つ必要があります。
もしこのまま途方にくれて初回の呼出期日がすぎてしまいますと、被告(あなた)が出廷しないままに欠席判決が出され、あなたは一方的に敗訴してしまいます。急いで対応する必要があります。
さて、お金がないとのことですが、こうした事情で弁護士を頼めない人のために、費用の立替えをする『法律扶助協会』という組織がありますので、とりあえずここに相談してみて下さい。これは、国・地方公共団体・弁護士会などの援助を受けて運営されている公的な組織ですので安心です。各都道府県ごとに、各弁護士会に併設する形で支部がおかれていますので、まず電話で確かめて法律扶助の申込みをして下さい。
申込みをすると、まず法律相談をおこなってくわしい事情を聞いたのち、法律扶助の決定がなされ、弁護士の紹介ならびに訴訟費用や弁護士着手金の立替えが受けられます。もちろん事件は交通事故に限りません。家庭内のトラブルや近隣のトラブル、不動産にからんだ紛争等々、民事事件や家事事件・少年事件についてあらゆる問題で扶助を受けることができます。また、あなたの方から原告となって訴訟を起こすこともできます。ただ、刑事事件については、起訴された段階で国選弁護人といって国の負担で弁護士を付けてもらえる制度が整っています(憲法37条、刑事訴訟法36条)。しかし起訴に至らない被疑者段階では、この法律扶助の適用対象となります(ただし一部支部ではやってない)。
扶助を受けられる基準ですが、経済的な基準と内容についての基準があります。
経済的な基準としては以下のとおりです。
※本人または同一生計家族の手取月収額の合計が、次の額以内であること(H9.4.1現在)。
単身者 18万2000円
2人家族 25万1000円
3人家族 27万2000円
4人家族 29万9000円
ただし、家賃・医療費・教育費等の支出がある場合には、基準額を超えても考慮されます(地域差も考慮)ので申し出て下さい。
内容については、(1)勝訴する見込み、あるいは調停・和解などによる解決が見込まれること、(2)弁護士に依頼することにより、申込者の利益になることが期待できること、(3)正当な権利の主張であること、の3点が必要です。ただし、サラ金事件については、生活保護の受給者で、同時廃止または免責が見込まれ、かつ予納金は本人が支出できることが条件です。
つまり、お金がないというだけの理由で権利をおびやかされても泣き寝入りしなければならないという不正義をなくそうとつくられた制度ですから、自分で裁判費用の負担ができない人で、勝訴の見込みがあるなら法律扶助が受けられるのです。
立替金の返済は、扶助の決定がなされた翌月から割賦で返還することになります(無利子、月々1万円前後)。そして勝訴してお金が入った段階でまとめて支払うのが原則です。ただ、事情により返済が困難な場合には猶予する制度や免除されることもありますのでご相談下さい。