
法のくすり箱
Q、夫の定年後、子供のない私たち夫婦は年金やパートの収入で静かに暮らしています。ところが最近、夫の体調が悪く急にふけこんできました。両親はいずれもなくなり、身寄りに縁の薄い私たちですが、夫には一人暮らしの弟が一人います。夫にもしものことがあったとき、遺産は(といっても、今住んでいる持家ぐらいですが)皆私のものになるのでしょうか?
A、あなたの夫が死亡された場合の遺産相続人は、あなたと夫の弟さんです。そして法律の定める相続分は、あなたが4分の3、夫の弟が4分の1となっています(民法889・890・900条)。ですから、ご主人が亡くなった段階で弟さんが相続分を主張されれば、場合によっては現在の持家を処分して弟さんに支払い、あなたは残るお金をもってアパートなどへ移るという事態も考えられないではありません。持家を処分しないですむ場合でも、弟さんには相続分に相当する金銭を渡したり、もしくは弟さんに了解の得られる支払いをして遺産分割協議書をつくり、そこではじめて持家の名義を亡夫からあなたに移転するということになります。
しかし、今のうちに、夫に遺言状をつくってもらい(遺言については「そよ風第34号」参照)、遺産をすべてあなたに残してもらうことにしておけばこのような事態は回避され、あなたは夫の弟さんのことを心配せずにすべてを相続することができます(ちなみに、兄弟姉妹には遺留分が法的に認められていませんのでご安心ください。1028条)。また、夫からあなたへの生前贈与を活用する方法も役に立つ場合があります。結婚されて20年以上にもなられている場合には、贈与について一定額(現在2000万円)まで非課税の特典があります(相続税法21条の6)。
なお、夫の弟がすでに亡くなっていても、弟の子供が生きていれば、その子供が相続では親である弟と同じ権利を与えられていますのでご注意下さい(代襲相続、民法901条)。

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