法のくすり箱
Q、私は2DKの賃貸マンションに住んでいますが、先月同じ階に入居してきたAさんが狭い廊下に自転車を置かれるので通行に邪魔になります。「部屋の中にいれてくれませんか」と注意したのですが、「あなたに何の権利があるの、余計なお世話よ」などと言い返されてしまいました。私のAさんに対する注意は法的にも認められていないのでしょうか?
A、判例によれば、あなたの借家人としての権利にもとづいて廊下に自転車を置くことの禁止を求めることはできません。しかし家主(マンション所有者)の権利の代位行使(家主にかわって行使する)という意味で、あなたのAさんに対する注意(禁止の申入れ)を認めていますので、どうかご安心ください(民法423条)。
本件のような行為は、共同生活を前提とするマンションでは通常、賃貸借契約で禁止されています(仮にそのような契約の文言がなくても、共同の利益に反するとして当然に禁止されるものと解されている)。そして家主はあなたに対してマンションで円滑な居住をさせる義務を負っていますし、逆にあなたは家主に対してマンションを使用目的に適した状態におくように請求する権利をもっています。
そこで家主はAさんに対して借家契約に基づき、他の借家人に対して迷惑になる行為の差止めを求めることができます。ですからあなたは、家主に対してマンションを使用目的に適する状態におく(この場合廊下に自転車を置かせない)ように申し入れるのが適当でしょう。もっともあなたがAさんに直接申し入れたことは前述の家主の有する妨害排除請求権の代位行使であり、何ら問題はありません。
ところで、これが賃貸マンションではなく、入居者が建物の区分所有者である分譲マンションであれば話は別です。あなたは建物区分所有法の規定「区分所有者は…建物の管理又は使用に際し…共同の利益に反する行為をしてはならない」(6条1項)により、直接Aさんに対して自転車の駐輪禁止を申し入れることができます。また、ちなみに分譲マンションの規約(なお規約に規定がなくても当然の禁止行為と解されている)をよりどころとしてもあなたが直接Aさんに申し入れることは支持されるでしょう。

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