予防法務ジャーナル「そよ風」▲非行に走る子への対処▼

法のくすり箱

Ｑ、私の子供（中３、男子）は、昨年の夏頃から学校や街の非行グループと付き合うようになり、先日、その仲間と万引をしていたと近所の人から聞きました。これでは本格的に非行に走るのではないかと心配しています。どうすればよいのでしょうか？

Ａ、非行といっても万引を一回して補導されたというものから深刻な犯罪までさまざまな態様があります。あなたのケースでも、このまま放っておいて対応を誤ると、将来刑法に触れるような行為をするおそれがあることが考えられます。

　一般に、非行化傾向にある子供を善導するため、親・兄弟・教師・友人等関係者が一丸となってできる限り努力すべきことは勿論ですが、なお非行化を矯正できないときのために、次のような専門の機関や制度について理解しておくことも必要です　。

　まず警察では、保安課（少年係）で少年非行問題の相談を受付けています。ここでは、子供の行状・素質・経歴等について相談をうけ、子供や家庭の問題を把握して、実際の生活にもとづいて具体的な助言・指導を行います。家庭や地域環境の問題、少年自身や友人の問題など問題点はさまざまですが、学校や家庭と連絡をとりつつ非行の防止と補導に取り組みます。実際には、親子が、あるいは教師も一緒に保安課へ行って面談し、解決へ向って取り組むケースがほとんどで、直接、保安課の担当者が家庭に出向くことはまれです。しかし、場合によっては子供が暴れたりしたときに、親が担当者に連絡を取れば家の方へ出向くこともあります。

　しかし、このような指導を続けても効果があがらないとき、さらには新たな事件を引き起こしてしまったときは、問題を家庭裁判所へ送ります。（少年部送致、少年法４１条）。家庭裁判所では、送致されてきた子供につき、調査官による調査を行ないます。この調査は、原則として、在宅調査（少年を施設に収容しないで家庭生活をさせながらの調査）ですが、この方法によることが不適当と判断されるときには、本人を少年鑑別所に収容して調査します（少年法８、９条、１７条１項）。調査の結果に基づいて、裁判所は、子供の改善を図るために最も適切と思われる処遇を審判によって決定します。

　右の審判を初めて受ける少年や、非行の程度が比較的軽い少年は、多くの場合、試験観察（調査官が少年を補導しつつ生活の実態を観察し、改善のための措置に必要な調査を行う。少年法２５条）や保護観察（保護観察官や保護司の指導監督のもとに日常生活において善行の保持など一定の事項を遵守しつつ改善をはかる。犯罪者予防更生法３３条）に付されます。非行の程度が重い少年や、保護観察において改善の認められない少年などは、その経歴・行状・年齢等に応じ、少年院・児童自立支援施設（旧教護院・感化院）［くわしくは「そよ風９３号」参照］への送致という処遇決定がなされます。

　以上は警察へ相談を持込んだ場合ですが、これとは別に、児童相談所でも非行の相談窓口を設けています。ここでも専門の係員が相談に応じ指導にあたっています。家庭環境や本人の性格のために指導効果のあがらない少年につき、児童養護施設や児童自立支援施設への収容、あるいは家庭裁判所への送致等が行なわれます（児童福祉法２７条、２７条の２）。

　このケースにはあてはまらないようですが、傷害等の犯罪を犯した少年は、検察庁へ送られてから家庭裁判所に送られます。家庭裁判所が、少年の罪質や情状に照らして刑事処分が適当であると判断した場合には、再び検察庁に送られ、検察官の判断により不起訴とされる場合を除き、刑事裁判によって処分されることとなります。

　子供の非行相談はしにくいものですが、子供の非行が懸念される場合には、状況に応じ、積極的に、このような専門機関の指導や援助を受けることをおすすめします。

［ことば欄］

☆少年鑑別所
　家庭裁判所での審判に必要な調査を行う施設。
　少年を収容して、外部からの刺激と影響を受けないような状態におき（２週間から４週間拘束）、心理学・社会学・医学等の専門的知識によって資質の鑑別を行う。
　単なる拘禁施設ではなく、資質の鑑別を通じて、少年の科学的処遇の実現をはかるために重要な役割を果たしている。
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☆少年院
　犯罪化傾向のある少年を収容して矯正教育を行う施設。初等・中等・特別・医療の４種類の少年院があり、それぞれ次のような者が収容され、そこで生活指導・教育・職業訓練等を行う。少年院送致は家庭裁判所が審判により少年に言い渡す保護処分の中で、最も厳しい処遇である。

（１）初等少年院
　　　心身に著しい故障のない１４歳以上おおむね１６歳未満の者
（２）中等少年院
　　　心身に著しい故障のないおおむね１６歳以上２０歳未満の者
（３）特別少年院
　　　心身に著しい故障はないが、犯罪的傾向の進んだおおむね１６歳以上２３歳未満の者
（４）医療少年院
　　　心身に著しい故障のある１４歳以上２６歳未満の者
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