[1992(平成4)年8月1日以降の新しい契約には、全面的に新「借地借家法」が適用されます。しかし、それ以前から成立していた契約には、その権利の存続について、旧「借地法」・旧「借家法」が適用されます。本文中、イタリック(斜字)で記した部分は、旧法が適用される古い契約には該当しないのでご注意下さい。]

法のくすり箱
Q、私は老後のための投資として小さなマンションを買いそれをAに貸していますが、思わぬ妻の大病で出費がかさみ、マンションを処分してまとまった金にかえたいと思います。Aに出てほしいと頼んだのですが応じてもらえません。どうすればよいでしょうか?
A、あなたとAとの間でいつまでと借家契約の期間が決めてあれば、Aが任意に応じないかぎりその期間中はAにマンションを貸してあげなければなりません。そこで期間終了後に明け渡してもらうことになりますが、そのためには期間満了前6ヶ月〜1年以内に、借家契約を更新しない旨を申し入れる必要があります。のみならず、あなたの側に正当の事由があることが必要とされています(借地借家法26・28条、旧借家法1条の2・2条)。
もしあなたとAとの間でいつまでと借家期間を定めていない場合には、いまから解約の申入れをすることができますが、そのときには6ヶ月以上期間をおくことが必要です(たとえば、Aに対してこの通知を受領した日の翌日から6ヶ月目に解約する、と申入れる)。ただしこの解約申入れにも正当の事由が必要とされています(借地借家法27条、旧借家法3条)。
あなたの気持ちとしては正当の事由と認めてほしいことでしょうが、Aが争えば終極的には裁判所が双方の利害を比較して社会通念に照らして決めることになります。一概にはいえませんが、あなたに金がないというだけでは無条件の明渡しは認められない可能性が強いのです。ただあなたにかなりの必要性があると考えられる場合には、立退料を支払うことで正当事由を補充することが可能な場合もあります。
以上のように借家人の保護はかなり手厚いものとなっていますので、あなたとしてはまず誠意をもってAと話合い、その結果によりさらに法的な手続きを執ることにしてはどうでしょうか。

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