Ｑ、私は、６年前父が死亡してから父の後妻を引取り、以来、お母さんと呼んで一緒に暮らしてきましたが、先日、私の看病の甲斐もなく病気のために亡くなりました。継母は身寄りもなく、私とも養子縁組していませんでした。この場合、継母の遺産は手元に残らないのでしょうか？
- （1) 被相続人と生計を同じくしていた者
- 長年生活を共にした内縁の妻や事実上の養子、おじ・おば、嫁など。
- （2) 被相続人の療養看護に努めた者
- たとえ生計は別であっても養育にあたったり罹病後は看護にあたった親族や民生委員、看護婦など。
- （3) その他被相続人と特別の縁故のあった者
- 長年話し相手として孤独を慰め、経済的援助などもした師弟や近隣の人々、あるいは被相続人の収容されていた養老院をもつ町など。
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Ａ、民法では、とくに遺言がない限り、一定の親族の者のみを相続人として決めています（推定相続人）。したがって、内縁の妻や事実上の養子といった法律上親族にあたらない者は、実際に被相続人と深い係わりがあっても原則的には財産をもらうことはできません。
ただし、相続人不在で相続財産がある場合は、これらの人々にも家庭裁判所が相続財産を分与できることになっています（９５８条の３）。その対象となる人を特別縁故者といいます。
特別縁故者の範囲は次のような人々です。
いずれも、「もし死者が遺言を残したとするなら恐らく遺贈したであろう」と思われることが基準となって、具体例ごとに家庭裁判所が判断します。
あなたの場合も、継母と血縁関係がなく推定相続人ではありませんが、継母と生計を共にし、療養看護にあたったわけですから（(1)・(2)に該当）、当然特別縁故者にあたると考えられます。ただ、財産分与はあくまでも縁故者の請求によって与えられるので、黙っていても当然もらえるわけではありませんから、最寄りの家庭裁判所に申し出ることが必要です。
さて、相続人が不明のときの相続財産の取扱いは以下のとおりです。
まず、利害関係人（債権者や特別縁故者など）や検察官が家庭裁判所に申し出て、相続財産管理人が選任されます（９５２条１項）。このことが官報に公告され２ヶ月以内に相続人が出てこなければ、今度は相続財産管理人が債権者・受遺者（生前贈与を受けた人）は名乗り出るよう催告し（９５７条）、また２ヶ月以上たって現れない場合は相続人捜索の公告をします（９５８条）。さらに６ヶ月たって権利を主張する者が誰も現れなければ、初めて相続人不存在が確定されます。特別縁故者は、遅くともこの確定後３ヶ月以内の時期までに家庭裁判所に遺産分与の申立てをしなければなりません。この期間がすぎてしまうと相続財産はすべて国庫へおさめられてしまいますのでご注意下さい。
あなたの場合もとりあえず家庭裁判所に出向くか、法律事務所を訪ねて相談してみて下さい。
〔ことば欄〕
☆推定相続人
民法では、とくに遺言がない限り相続人となるべき者が決められ（８８６条〜８９５条）、その相続分も定められている（法定相続、９００条）。推定相続人とは、この法定相続を受けるはずの者、つまり現状において当然相続人となるであろう者をいう。
参考までに主な法定相続のケースを例示する（かっこ内は法定相続分）。
＜配偶者がいる場合の法定相続＞
ａ．子供がいるとき
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配偶者（２分の１）と子供（２分の１を各等分）
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配偶者（３分の２）と父母（３分の１）
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配偶者（４分の３）と兄弟姉妹（４分の１を各等分）
＜配偶者がない場合の法定相続＞
ａ．子供がいるとき
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子供（各等分）
-
父母（各等分）
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兄弟姉妹（各等分）
なお、子供や兄弟姉妹が死亡していても、それらに子供が遺されていればその遺児に当該親の相続権が与えられる（代襲相続、８８７・８８９条）。
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