
法のくすり箱
Q、10日間のヨーロッパ旅行から帰って雑用に追われ、昨日ようやくスーツケースを片づけようとしたところ、スーツケースにヒビが入っているのに気が付きました。最後のホテルでは確かに何ともなかったので、帰りの飛行機でできたのだろうと思います。一応保険には入っていましたが、もう帰国してから1週間以上たっています。請求は可能でしょうか?
A、海外旅行がさかんになり、各保険会社によってさまざまなタイプの保険が出されています。あなたの加入された保険はどういうタイプか、今一度手元の契約書やパンフレットでご確認ください。傷害や疾病時の補償だけの契約なら仕方ありませんが、携行品の損害についても補償の旨の特約があれば当然請求できます。スーツケースに限らず、カメラやみやげ物(別送品はダメ)などが壊れたり盗まれたりしたときも同様です。ただ、現金や航空券などはこの中には含まれません。
さて請求の時期ですが、もちろん早いにこしたことはありませんが、各保険によって事故の通知の期間が定められていますので、その期間内に届け出れば何ら問題ありません。約款でお確かめください。一般には、事故の日から30日以内の通知となっていますので、あなたの場合も十分、日はあると思われます。
手続きの方法は、保険会社備付けの用紙(保険金請求書)に必要事項を記入のうえ、若干の書類を添えて提出することになります。まず、損害を証明する写真(スーツケースのヒビの写真。修理に出す前に必ず撮っておいてください)。第三者による事故証明書(グループツァーのときは添乗員、プライベートツァーのときは同行者に書いてもらってください。まったく1人のときは保険会社に事情を話して交渉することになります)。当該スーツケースの買入れ時の価格証明(不明のときは現在市販の同型のものの価格でもよい)。そして修理代の見積書(あるいは請求書・領収書)です。もし修理が不能ということであれば、「不能である」旨の証明書を当該かばん屋さんで発行してもらってください。
これだけの書類をそろえて保険契約証とともに保険代理店に提出すれば1ヶ月以内に修理代が支払われます。ただし、契約時に免責額というのが決められていて(たとえば3000円)、実際には、修理代からその額を差し引いた金額が支払われることになります。また修理不能の場合には、そのスーツケースを何年使っているか等により減価償却分が計算され、残りの価額からさらに免責額を引いたものが支払われます。いずれにしろ手続きは簡単ですので、契約した代理店にとりあえず相談してみられることです。
ところで、もし保険に入っていらっしゃらなかったとしても、あなたのように飛行機で運ばれる途中に損傷したのが明白であれば、航空会社にその損害を請求することも可能です。ほぼ同様の手続きで、国内線なら3日以内、国際線なら7日以内に請求します。そしてもし空港ですぐに気が付かれたら、クレームタッグ(荷物預入時に渡されるラベルの半切れ)を持ってその航空会社のカウンターにすぐに行かれることです。手続きを簡単に済ませることができます。
蛇足ですが、たとえ複数の保険に入っておられたとしても、損害額以上が支払われることは当然ありません。二重・三重払いは認められませんので、各保険から何分の一ずつかの支払いがなされるか、重ねての支払いは拒絶されることとなります。

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