法のくすり箱
Q、私はある会社のセールスマンをしており、出来高払いによる歩合制によって賃金をもらっています。この方法ですと、従来、勤続1年以内であっても内勤社員に比べよい給料でしたが、最近製品の需要が一般的に少なくなり、セールスマンの売上げも減少しています。保障給の制度はありますが、口に出すのも恥ずかしいくらい少額です。これを引き上げるように会社に要求することはできるのでしょうか?
A、化粧品や教育機器のセールスマンや保険の勧誘などのように賃金が出来高払いや請負制によって支払われている場合には、仕事量の変動や多少によって賃金が左右され、セールスマンの生活が不安定になることがあります。そこで労働基準法はいわゆる保障給について定め、最低限度の生活ラインを保障しようとしています(出来高払制その他の請負制で使用する労働者については、使用者は、労働時間に応じ一定額の賃金の保障をしなければならない。27条)。
この場合の保障給の額の目安ですが、休業手当が賃金の60%以上の支払いを使用者に義務づけているところからすれば、労働者が現実に就業しているこうした給料の場合においても平均賃金の60%を保障すべきものとするのが労働省の見解です(労働省労働基準局編著『労働基準法』105頁)。また保障給制度の趣旨は、労働者の責任ではない理由で(景気変動や需要減少など)実収賃金が下がることを防ぐことにあるわけですから、国は法制定以来、常に通常の実収賃金とあまり隔たらないよう保障給の額を定めるよう指導してきています(労働基準局昭和22年通達17号)。さらに、たとえ出来高払い制の賃金であっても、最低賃金の水準をクリアしていなければならないのは当然です。
あなたの会社の外勤・内勤を含めた平均賃金がどの程度かわかりませんが、その40%〜50%といった保障給の額の場合、労働基準法27条違反ということは必ずしもいえないかもしれません。しかしながら、平均賃金の10%とか20%といった低い保障給を定めている場合にはまず違法であるといってよく、処罰(10万円以下の罰金、120条)の対象となります。
いずれにせよ、あなたは労働基準署に対して事情を話し、改善の指導を求めることができます。募集広告では、あなたの努力しだいで月収50万円などと謳われていても、あまいキャッチフレーズに惑わされずに保障給(基本給)についてしっかり確認することが大切です。

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