法のくすり箱


、私はある株式会社の代表取締役社長として会社と銀行との間の取引について連帯保証人となっていましたが、都合により近く社長を辞任することになりました。これによって銀行との連帯保証人の責任を免れることができるでしょうか?


あなたが代表取締役社長という一定の職務・地位を前提として銀行に対し会社の債務を保証していたのであれば、その職務・地位を去った場合には保証期間の定めの有無を問わず一方的に解約することができます(昭和16年大審院判例)。会社の代表取締役に就任している間は会社の取引に直接関与し、会社の動きを常に知ることができますが、辞任後はこのような地位から去ることになります。そうすると権限もなく情報も入らないにもかかわらず保証責任だけが継続するということになり、それでは辞任した代表取締役に対し酷であるということで一方的に解約できるとされているのです。しかし何もしないでいても自動的に解約されるわけではありません。内容証明郵便で解約の通知をしておくことです。ただ、一方的に解約した場合には、その効力は将来に向かってのみ生じることになりますから、あなたの在任中に発生した銀行債務についてまで連帯保証人の責任(民法454・458条)を免れることはできません
 したがってあなたとしては銀行に申し出て合意解除をしてもらうことが得策です。銀行においても新しい代表取締役が連帯保証人になるのであれば解除してくれると思います。そして合意で解除するのであれば、とくに断らない限りは在任中の債務についても責任をまるまる免れるものと解されます。上の場合には正確には合意解除というよりも、免除に近いものとなります。銀行とよく話し合って任期中の債務についての責任をはっきりさせておく(できれば保証免除の書面をもらう)ことが賢明です。
 ちなみに保証期間の定めのない保証契約は、仮にあなたが代表取締役に在任中であってもすでに連帯保証人になってのち相当の期間が経過しているのであれば、一方的に解約できるとされています(任意解約権、大正14年大審院判例)。しかし任意解約権の場合、申入れによって直ちには解約の効力は生じません。たとえば銀行が引き続き会社と取引を継続するのであれば、あなたの保証にかわる担保を提供させるために必要な期間を経過してから解除の効力が生ずるとされています(昭和9年大審院判例)。この場合に解約の効力は将来に向かってだけ生ずるものであることはもちろんです。

<内容証明郵便>
 いつ、どのような内容の文書を、誰から誰へあてて差し出したかを、郵便局が証明する郵便。差し出した文書の内容を、後日の証拠として残しておく必要があるときに利用される。配達証明を付けるとより確実となる。
 内容証明用紙(タテ20字×ヨコ26行、市販されている)を用いて、同文の手紙を3通(受取人・差出人・郵便局保管用)を作成し、郵便局の窓口へ、差出人・受取人の住所・氏名を明記した封筒(開封のこと)とともに提出する。その際、捺印・訂正印もれなどがあるので、差出人の印を持参した方が無難。証明料は、配達証明料300円、内容証明料謄本1枚420円(1枚をこえ1枚増すごとに250円増)、書留料金420円、通常郵便料金(定形25gまでなら80円)の合計となり、最低1220円よりとなる[平成12年11月現在]。
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<連帯保証人>
 保証人には、連帯保証人と「連帯」の2字のつかない普通の保証人とがある。たとえば、金の貸し借りで、貸主に対して保証人になったとする。普通の保証では、保証債務は主債務(借主の義務)を補充するものであり、貸主がいきなり保証人のところへ請求してきたときには、まず借主に請求するようにと抗弁できる。しかし連帯保証人はそれができない。また普通の保証人が数人いるようなとき(共同保証)、各保証人は貸主に対して保証人の頭数で債権金額を割った額だけ払えばよい(分別の利益)。しかし連帯保証人は数人いても、各自が全額を貸主に支払う責任がある。この場合、弁済をした保証人Aは、貸主に代わって借主に対して支払請求権を行使できるが(民法500条)、さらにAは、他の連帯保証人に対しても求償(他に2人連帯保証人B・Cがいたとすれば、普通、B・Cに対して各3分の1ずつ求償)できる。
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