法のくすり箱
Q、私は長年都心の借地上に小さな家を建てて住んでいます。このたび、郊外にもう少し広い家を求めるためこの借地上の建物を売りたいと思い地主に承諾を求めましたが、多額の承諾料を要求されて困っています。承諾料の支払いは法律上の義務でしょうか?また、承諾料には相場がないのでしょうか?
A、承諾料(名義書替料)には客観的な相場があるわけではありませんが、実情としては借地権価格(場所によって異なりますが、地価の6割前後)の10%内外のところに落ちつくケースが多いように思われます。
この承諾料は、別段、地主の法律上の権利ではなく借地人の側でもなんらこれを支払う義務はないのですが、借地人が借地上の建物を売却するときには地主の承諾が必要とされるため、地主の承諾を円満に調達するために事実上慣習化されてきています(民法612条、建物の譲渡は借地権の譲渡を伴い無断譲渡は契約解除の事由となる)。
地主が承諾をしない場合には、借地借家法の規定により、裁判所に申立て(建物を譲渡しても地主に不利になるおそれがないにもかかわらず借地権の譲渡を承諾してくれないから裁判所が判断して右承諾に代わる許可をしてほしい)を行い、裁判所がなかに入って承諾をさせるかどうか決めてもらう方法もあります(借地非訟手続、借地借家法19条)。この借地非訟手続では、地主に承諾をさせるについて借地人に対して相当の対価の給付を義務づけることが(附随処分)、実質上それは承諾料の支払いと同様の意味をもつものといえます。
なお、この承諾料については、借地人が負担するのか借地上建物の買受人が負担するかの問題があり(当事者間の力関係や考え方により、一方が持ったり折半して負担したりに落ちつくことと思われます)、地主との交渉に際し、あなたとしては同時に念頭においておく必要があります。

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