
法のくすり箱
Q、私は市街地のビルの一室を借りて美容院を経営しています。昨年、国民金融公庫から500万円の融資を受けて店舗を改装したばかりです。
ところが今年になってからこのビルが人手にわたり、新しい持主の代理人と称する男からビルを取り壊すことになったので立ち退いてほしいと申入れを受けました。このビルに入居しているテナントたちは次々に退去して空室が多くなってきています。代理人という男は私が立ち退かなければ、私の店の部分だけ残してビルを壊すと言います。どうしたものでしょうか?
A、あなたは、これまで美容院を経営して家賃もきちんと払ってきたものと思われますから、家主が一方的に明渡しを求めたからといってそれに応ずる義務は一切ありません。
あなたには、解約には正当な事由を要件とするなどの借地借家法・旧借家法の保護(新法28条、旧法1条の2ほか)があり、少なくとも、地上げ・高層建替えなどを理由とする解約申入れ(解約要求)はできないものと考えられます。
しかし、このような解約申入れでも、あなたがそれに応ずるのであれば話は別です。十分な立退料を受け取るとか、あなたが納得できる条件について合意に達すれば明渡しもあなたの選択の問題です。しかし、あなたが納得できないにもかかわらず、あなたの店にやって来て実際にあなたの美容院だけを残して取り壊すなどと強硬に立ち退きを迫る場合には、ときには威力業務妨害・強迫強要・不退去などの犯罪の成立も考えられます。
追出しをはかる側では、それが法律的にはもともと無理であることは百も承知なのです。あなたが否といっても簡単に引下がることは少ないと思われます。それだけに、あなたがファイトをもって毅然と立ち向かうことが重要です。ファイトが伴ってこそ相手の強硬手段に対する警察の支援も確かなものとなるのが実情です。勇気をもって警察へ通報(110番)するほか法律事務所への相談を考慮するなど辛抱強く対処してください。
万一、あなたの美容院だけを残して取り壊すとしても、それによって通行・通信・電気・ガス・水道等に支障を及ぼすことは一切許されないものと考えられますので、そのようなときには、ビルの持主は、民事上・刑事上の各種の法的責任は免れません。恐れずにビルの持主側と話合ってみてください。

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