
法のくすり箱
Q、借家契約を結ぶ場合に契約書は必要ですか?公正証書にすればよいという話を聞きますが、どのようなメリットがあるのでしょうか?
A、建物の賃貸借契約を結ぶ場合、契約内容を明確にするため、ふつう契約書が作られますが、これを作らなければ契約が成立しないというものではなく、口約束でもかまいません。家賃の領収書だけで契約書がないという例はよくあることで、この場合でももちろん契約は有効に成立しています。一般に、契約書には、決まった書式があるわけではなく、書店・文房具店などで売っている市販のものを利用しても、あるいは、家主と借家人が話し合いで決めた文案で契約書を作ってもよく、末尾にそれぞれが署名・捺印して完成させます。
ところで、公正証書とは、公証人役場で、公証人の面前で当事者が契約の趣旨を述べ、公証人がそれを聴き取って証書を作成するものをいいますが(公証人法1条)、これを利用すれば、(1)普通の契約書に比べて公文書としての強い証明力があるため(旧民訴法323条、新法228条2項)、紛争の予防に役立つこと、(2)公証人が違法な契約内容等をチェックするため(公証人法26条)、契約が無効になるおそれが少ないこと、(3)賃料など金銭の支払いを怠った場合にはただちに借主の財産に対して強制執行することができること等、少なからぬメリットがあります。しかし、ここで注意しなければならないのは、公正証書で強制執行できるのは金銭の支払いに限られており、建物明渡しなどは、やはり、別途、判決を得なければ強制執行できないことです。
公正証書の作り方ですが、当事者で契約内容について考え方をまとめた上、それぞれ実印と印鑑証明書(1通)を用意して公証人役場に出向き、公証人に契約内容を説明して依頼すればよいのです。
なお、契約当事者の一方または双方が会社の場合には、会社の資格証明書と印鑑証明書が必要ですし、代理人を立てる場合には別に委任状等が必要ですが、やや複雑なので事前に公証人役場に問い合わせることをおすすめします。

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