法のくすり箱
Q、新しくパートタイマーを数人雇い入れることにしましたが、従来からの就業規則とは別に、新しい就業規則をつくる必要はあるでしょうか? それとも労働契約のなかで労働条件さえはっきりさせておけばそれで良いのでしょうか?
A、常時10人以上の労働者を雇用する事業所では、就業規則を作ることが義務づけられ、所轄の労働基準監督署に届け出なければなりません(労働基準法89条)。これは労働者を保護するための制度で、当然ながらその内容(労働条件)は法令上の基準を守らねばならないと同時に、実際の労働契約の最低線を示すものとなります。つまり、個々の労働契約(あるいは慣行)で就業規則より高い条件で契約した場合は差し支えありませんが、逆に就業規則を下回る条件(たとえば低い賃金、長い労働時間など)で契約すると、その労働契約の当該部分は無効とされ、就業規則なみの待遇が義務づけられます(93条)。そしてこの就業規則は一度つくられると、パート・臨時工を問わず、その事業所で働くあらゆる労働者に適用されることになります。
ところでおたずねのパートタイマーの場合ですと、正社員と扱い・待遇が異なるのが普通と考えられます。したがって、従来の就業規則の中にパートを対象とした除外・特別規定をもりこむか、あるいは新しくパートのみの就業規則を作成しなければなりません。さもなければ、どういう労働契約を結ぼうが、就業規則(正社員なみ)の待遇がパートにも適用されるということになります。これはパートが何人であるかにかかわらず、常時10人以上の雇用者がいて就業規則のある事業所にはすべてあてはまります。
手続きは、作成・変更とも、「労働者の過半数で組織する労働組合がある場合においてはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がない場合においては労働者の過半数を代表する者の意見」(90条1項)を添付して届け出ることになっています。パートも含めて全従業者の過半数と考えれば結構ですし、個々の従業員に意見を聞いてまわる必要もありません。また、その意見を尊重するのが当然のたてまえですが、同意を得るということではありませんので、一部反対・全部反対の意見であってもそれを添えれば届出は受け付けられることになっています。
就業規則の内容(労働基準法89条より)
- 始業及び終業の時刻、休憩時間、休日、休暇並びに労働者を2組以上に分けて交替に就業させる場合には就業時転換に関する事項
- 賃金の決定、計算及び支払の方法、賃金の締切及び支払の時期並びに昇給に関する事項
- 退職に関する事項
- 退職手当その他の手当、賞与及び最低賃金額
- 労働者の食費、作業用品その他の負担
- 安全および衛生に関する事項
- 職業訓練に関する事項
- 災害補償及び業務外の傷病扶助に関する事項
- 表彰及び制裁
- 前各号の外、当該事業所の労働者のすべてに適用される事項(たとえば欠勤、遅刻、早退、外出、旅費、休業、福利厚生など)
※なお、1〜3は必ず定めておかなければならない事項。
4〜10はこれらの事項に関する定めや慣行があれば必ず定めておかなければならない事項。

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