[1992(平成4)年8月1日以降の新しい契約には、全面的に新「借地借家法」が適用されます。しかし、それ以前から成立していた契約には、その権利の存続について、旧「借地法」・旧「借家法」が適用されます。本文中、イタリック(斜字)で記した部分は、旧法が適用される古い契約には該当しないのでご注意下さい。]

法のくすり箱
Q、私は、多年、いわゆる文化住宅に借家住まいをしていますが、最近、家主はこの文化住宅を取り壊して高層ビルを建てる計画を進めているもようです。最初この文化住宅に入居する際に、2年間を契約期間とする契約書をつくりましたが、もうとっくの昔にその2年間はすぎ、それ以来、別段契約書の書換えもしていません。私の場合、家主の要求があればすぐに立ち退かなければならないのでしょうか?
A、借家の期間は決めても決めなくてもよいのですが、契約で決める場合には、1年以上20年以下の範囲で決めなければならないことになっています(借地借家法29条、旧借家法3条の2、民法604条)。期間を決めない場合には(1年未満の非常に短い期間や、「お前が成功するまで」といった不確定な期間も期間の定めがないケースとして扱われる)、借家が滅失したり、ぼろぼろに老朽化するまで、借家契約はいつまでも続くものとされています。
そこであなたの場合ですが、契約書に書かれた期限(2年目)がやってきても家主が何もいってこなかったのですから、前と同じ内容の契約が続き(法定更新、借地借家法26条、旧借家法2条)、ただし、期間だけは決まらない契約、すなわち、期間の定めがない借家契約になっていると考えられます。そしてこのような期間が決められていない契約の場合には、家主は、いつでも解約申入れをすることができます(期間が決められているときは、その期間中は原則として解約の申入れができません)。
解約申入れをしてから6ヶ月経過したところで解約になります(借地借家法27条、旧借家法3条)が、この解約申入れには家主の「正当の事由」が必要とされ、これがないと6ヶ月たっても借家契約は今までどおり続くことになります。一般にこの「正当の事由」は、家主側の必要性、借家人側の必要性、社会の住宅事情などを考えて家主の必要性が大きいときに認められます(家主と借主とが正当事由の有無を争う場合には結局のところ裁判で決着するほかありません)。
一般にその判定は微妙ですが、家主側の経済状況の悪化、住宅の困窮や自己使用の必要性、借家人側の資産状態、建物の使用方法、不誠意や不信行為の有無、その他一切の諸事情により総合的に判断されます。少なくとも、借主側に特段の信義則違反がなく、家主に自己使用その他の要急事情も認められないあなたのようなケースでは、家主に正当の事由が認定されることはないと考えます。あなたとしては、相当の立退料の支払いがなされたりあるいは代替家屋が提供されるなどして任意に応ずる場合のほかは立ち退くことはありません。

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