法のくすり箱


、親友に20万円の借金の連帯保証人ということで実印を貸したところ、勝手に100万円もの借金に変更されていました。私はそこまでは責任を負いかねますが、この契約は有効なのでしょうか?


いくら親友とはいえ実印を貸してしまうとは乱暴なことをしましたね。金を貸す側にしてみれば、その親友が実印をもっているからには、きっとあなたが、100万円の借金について連帯保証人になることを承諾しているものと考え、さらには、その親友があなたを代理して連帯保証契約をする権限も与えられていると考えるのが通常かもしれません。ところがあなたは、実のところ、20万円の範囲でしかその親友に上の連帯保証を許諾していないのですから、100万円ともなれば80万円分は親友の勝手な無権限の代理行為です。あなたにとっては迷惑もいいところです。
 しかしこの場合、友人はあなたとの関係においてまったくの無権限者ではありません。20万円の範囲では権限が与えられており(基本代理権の存在)、ただ実際はそれを越えてしまったというケースですから、このようなときには相手方(貸主)の信頼の保護が重視されて100万円の連帯保証契約はなお有効とされてしまうことが少なくありません(権限を超えた場合の表見代理、民法110条の適用)。ただしこの場合、貸主側には代理権限の存在についての疑問や不安があってはならず、善意無過失であることが要求されています。とくに貸主が金融機関のような専門家であるときには、保証人になったあなたに保証の意思確認の電話を入れるくらいの注意義務が要求されています。100万円までの権限がないことが、ちょっとした電話などで容易に判明したのに貸主側が不注意で怠ったためにこれを見抜けなかったというようなケースでは、上民法の表見代理の規定の適用がなく、したがってあなたは20万円の範囲でのみ保証したと突っ張ることができます。
 しかし、友人が支払わないためにいよいよあなたに対して支払いが求められてきた段階で、あなたの責任範囲が20万円か100万円かは容易に決着がつかないことが予想されます。貸主が争えば裁判までしなければならないかもしれません。保証人になるときに人まかせは禁物です。保証の範囲その他について直接に確認して自ら署名押印すべきです。
〔表見代理〕
 AがBの代理人ということである行為をした。しかし、実際のところ、Aには代理権がなかった。このようなケースを無権代理という。この場合、B本人はAの無権代理によって何の影響も受けないというのが原則である。
しかし、例外的に、
(1) BがAを自分の代理人だと紹介した。
(2) AがBから与えられた代理権の範囲をこえた。
(3) AはかつてはBの代理人であった。
などのケースで他人CがAに代理権があると信頼しても無理からぬ事情が生じることがある。このようなときには、Cの権利を守るため、たとえ無権代理行為であっても、Aの行為(代理でなされた契約など)の効果はB本人に及ぶことを認める。これを表見代理の制度(民法109〜112条)という。                       

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